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ブランド資産、ブランド育成といったものを理解する上では、纏まっていて読み易いテキスト。
『企業を高めるブランド戦略 (講談社現代新書)』['02年]
かつて電通に勤務し、現在は大学でマーケティングを教える著者が、ブランド戦略について書いた入門書で、新書でありながらもかっちりした内容となっています。
ブランドは企業の資産であるという考え方をベースに、「ブランド」とは何か、「ブランドマネジメント」とはどいったことを言うのか、消費者にとってのブランドの意味は何かといったことから説き起こした上で、本題であるブランド戦略に関して、新たなブランドの創造、成熟ブランドの活性化、企業ブランドのマネジメント、ブランドコミュニケーションについてを解説し、更に、企業戦略とブランド戦略の関係について述べています。
ブランド資産、ブランド育成といった概念は、本書刊行時には既に日本においても、それぞれブランド・エクイティ、ブランディングという原語のまま定着していたように思われ、そうした意味では、これまでの潮流も含めて解説したインナー向けの教科書的な内容という感じもしないでも無いですが、カタカナをズラズラ並べるのではなく、ちゃんと自分の言葉にして書かれている感じがして、それが全体としての読み易さに繋がっているのかも(一方で、新書1冊にしては詰め込みすぎで、説明がやや簡潔すぎたり、尻切れトンボになっているきらいも)。終わりの方にあるブランドの効果を巡っての院生と行った実験の結果や、各企業に取材したブランド育成戦略の中身についても、なかなか興味深いものでした。
キッコーマン/リーフレット「新酒 2003」
著者によれば、日本は企業ブランド社会であるとのこと、だから醤油メーカーのキッコーマンが70年代に初めてワインを発売した当初、「キッコーマンのワインは醤油が入っているような気がする」と関係者に言われ、「マンズワイン」というブランドを作ることで企業ブランドの使用を避けたとのこと。
一方、ネスレの調味料マギーのように、ネスレというブランドがマギーという当初はあまり認知されていなかったブランドの「保証マーク」として働く場合もあるわけで、この辺り、単一製品をイメージさせるブランドなのか、製品より(食品ならば食品全般にわたる)技術水準をイメージさせるブランドなのかの違いは大きいなあ(後者の方が汎用性が高い)。
また、「スター・バックス」の日本での成功例などに見られるように、今日ではブランドを短期的に育成し活用していくような経営・マーケティング戦略が競争優位をもたらす市場状況が出現しているという指摘も興味深いものでした(デル・コンピュータなどもそうだが、サービスプロバイダー型のブランドにとりわけ見られる特色とも言えるが)。