【1192】 △ 大塚 寿 『職場活性化の「すごい!」手法―モチベーションを一気に高める48の処方箋』 (2009/01 PHPビジネス新書) ★★★

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参考にならないわけではないが、あまりに「リクルート」回顧調。
  
職場活性化の「すごい!」手法.png職場活性化の「すごい!」手法2.png         組織を変える「仕掛け」.jpg
職場活性化の「すごい!」手法 (PHPビジネス新書)』['09年]  高間 邦男『組織を変える「仕掛け」 (光文社新書)』['08年]
 
 『組織を変える「仕掛け」-リーダーシップとは』(高間邦男著/'08年/光文社新書)を読んだ後に、実際の"テクニカル編"に当たるような本かなと思い本書を読みましたが、う〜ん、この著者はリクルートのトップ営業だったそうで、「やまびこあいさつ」、「寄せ書き」「社員図鑑」「社内パーティ」等々、いかにも「リクルート」という印象を受けました(他社の事例も多少はあるが)。

 職場を活性化するための手法が具体的に幾つも紹介されていて、その背後にある著者の考え方には異を唱えるわけではないですが、実際この本に書かれているようなことをやって効を奏す会社(職場)とそうでもない会社(職場)があるのではないかとも。

 著者自身、重厚長大で伝統的な企業には、「リクルートのようなイケイケ・ドンドンの社風は異次元のものに映るに違いない」、「工場や研究所の活性化のために太鼓や鳴り物で鼓舞激励するような手を使うというのは、TPOがずれているだろう」と最初に断りながらも、紹介されている例の多くは、リクルートで著者自身が経験したものです。

 著者がいた頃のリクルートは、単一または少数の自社メディアを掲げ皆で一斉にセールスにかける、そうした営業スタイルが主体だったのではないでしょうか。
 一見、最近のベンチャー企業と似てなくもないですが、例えばITベンチャーでも回線リセールのような業務を主体とする会社と、コンテンツ・ビジネスを主体とする会社では大きく業態が異なり、後者の方は、下手すると社員数だけの職種があったりするわけで、そうした意味では「研究所」的な要素もあって、ベンチャーだからと言って、本書にあるような手法が向いているとも限らないのでは。

 但し、社風や職場風土に似つかわしくないかなと思われることでも、職場のムードを変えるために、ある時期、思い切ってやってみた方が良いというようなこともあるでしょう。
 ナレッジ・マネジメントにおける「場」の考え方にあるように、インフォーマル・コミュニケーションの充実が図られるならば、それが人と人の関係や職場の活性化に寄与するところは大きいと思います。

 「社内報」や「社内イベント」などは、かつて企業業績が好況だった時期には、別にそうした意図のもとでなくても、自然発生的にあったように思います。
 今は、入社以来そうしたことを経験したこともなく、日々の業務に追われている人が、企業の若手社員には結構多いのでは。

 本書に紹介されている活性化事例が参考にならないわけではないですが、「リクルートではこうしていた」的な話ばかりで、冒頭の断り書きを除いては、その方式がどの会社や職場でも通用するような感じで書かれているのがやはり気になりました。
 著者が若手社員だった頃と今とでは社会情勢も就労意識も異なるし、また、その中でも当時のリクルートは特殊な会社だったわけです。
 帯にある「これだけあればどれかは効く!」というのは確かかもしれないけれど、どれが自社に効くかというのが難しいわけであって、その辺りを冒頭の一言で済ませているのはちょっと乱暴な感じも。

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