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同じような本が無いために、いまだにロングセラーであり続ける...。
『プレゼンテーションの説得技法(テクニック)』 ['89年] 『レポート・プレゼンに強くなるグラフの表現術 (講談社現代新書)』 ['05年]
プレゼンテーションにおける効果的なビジュアル・ドキュメントの作り方をわかり易く解説したもので、マニュアル的に使えるせいか、'89年という旧い刊行ながらも、いまだにロングセラーとなっている本です。
各種グラフやチャートの特徴と有効な使用例を、解説編とサンプル編にわけて多くの事例を用いて指し示すだけでなく、シートのサイズやレイアウト、文字の大きさから始まって、チャートに入れる文字の字数や行数、囲み罫からの距離まで示していて、実際のプレゼン場面でのテクニックや留意点、例えばスライドを映すスクリーンの適切な高さなどということまで記されており、まさに至れり尽くせり。
そう、この頃はまだ、切り張りして図や資料を作り(網目模様やカラーのセロファンをカッターで切って棒グラフの枠内に糊で貼り付けていたりしていた)、OHPシートにコピーするなどしてスライド化し、それをOHPで映すということがまだまだ一般に行われていたなあと(これ、藤城清治か?というような、凝ったプレゼンを見たことがある)。
でも、この本が地味ながらも売れ続けているのは、結局、ビジュアル・ドキュメントの作成の基本は変わっていないということと、網羅している範囲の広さやサンプルの多さ、ワンポイントのアドバイスの的確さなどにおいて、同じような本がその後、手頃なところでは殆ど出ていないということもあるのではないでしょうか。
近年の同系統のものでは、大学でプログラミングを教えている先生が書いた『レポート・プレゼンに強くなるグラフの表現術』('05年/講談社現代新書)がありますが、その本にしても、エクセルの使用をベースに書かれている分、グラフの作り方だけで1冊終わってしまっていて、知っていることは既に知っているし、知らないものは、あまり使いそうもないものだったりし、確かにアプリケーションのマニュアル本よりは実戦的ですが、本書ほどの"至れり尽くせり"感はありませんでした。
ハンドブックとして役立つかもしれませんが、「新書」(横書き)という体裁が目新しいだけで、「新書」に限らなければ(新書にもあるが)、類書はいくらでもあるように思えました(評価★★☆)
『プレゼンテーションの説得技法』は、富士ゼロックス内のプロジェクトが編纂したもので、アプリケーションのマニュアル本の範囲を超えた、こうしたビジュアル・ドキュメント作成に関する分野というのは、オブジェクトの作成とプレゼンの実施の間にある、ある意味"隙間"であり、意外とそれ自体を専門としている人がいないのかも。