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パート労働法の改正を見越したような内容。効果的人材活用を制度として推進するという考え方。
『「パート・アルバイト・派遣の使い方」ここが間違いです!』 ['06年/かんき出版]
パート・アルバイト・派遣社員の雇用・労務管理について社会保険労務士がQ&A方式に纏めたもので(全81問)、社会保険に関しても解り易く解説されていますが、それだけでなく、むしろ1:2ぐらいの比率で労働基準法を中心に労働法全般に関わることに重点が置かれていて、採用から退職までの労務管理から賃金その他処遇等の人事管理全般にまでトータルに解説されているのが特長です。
'08年4月施行の改正パート労働法の2年前に刊行された本ですが、パート・アルバイト・派遣社員の効果的な人材の活用に繋がる雇用改善を社内制度として推し進めるという考え方が全般を通して貫かれていて、具体的な施策の提示も含めたQ&Aも幾つか用意されており、まるで予めパート労働法の法改正を見込んだような内容になっています。
法的な義務があるものについてはそのように明記する一方、「法的な義務ではないが、労使トラブルを回避するためにはこうした方が望ましい」、更に、パート・アルバイト等のモチベーションを喚起するためにはこうしたことが「望まれます」といった言い方が多くされているのが、弁護士などが書いた本とは異なる点でしょうか。
「家計補助的な理由で働いている」から「家計補助的な就労意欲だろう」、だから時給を安く設定していいかという問いに対し、同一労働同一賃金の原則を以ってきっちり回答していたりして、企業内の人事担当者だけでなくコンサルタント側にも経営者の考えに靡いてしまい、自分の中でこうした抵触する怖れのある法律との関連が弱くなってしまっているケースがままあることを思えば、読んでいて襟を正したくなるような思いも。
「1日6時間勤務のパートが配偶者の被扶養者になることを望んでいるが社会保険は入れなくてよいか」とか、「昼間部の学生に毎晩勤務させている場合、雇用保険はどうなるか」とか、「配達されるお弁当代を給与から引いていいか」とか、それぞれ、健康保険法、雇用保険法、労働基準法に関わる問題ですが、そうしたことが大いにありそうだなあというリアルな事例で設問が構成されています。
非正規雇用の全労働者数に占める割合は'08年で約35%、殆どの会社に非正規社員がいるわけで、まさに「総務部・店長必携」と言える本かも(逆に、コンサルタント側は、本書に書かれている事は社会保険関連も含め全て押さえておきたいところ)。