【1181】 ◎ 外井 浩志 『Q&A 65歳雇用延長の法律実務 (2005/12 税務研究会出版局) ★★★★☆

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改正法の緩さ・曖昧さが浮き彫りに? 今しばらくの間はお世話になりそうな本。

Q&A 65歳雇用延長の法律実務5.JPGQ&A65歳雇用延長の法律実務.jpgQ&A65歳雇用延長の法律実務 (スタッフアドバイザーライブラリ)』 ['05年/税務研究会出版局]

 65歳定年に向けた高年齢雇用安定法の改正('06年4月施行)に先駆けて、その前年末に刊行された本ですが、早期の刊行にも関わらず、法改正の内容解説だけでなく雇用確保措置の義務化に伴い起こりうる様々な問題についてQ&A方式で解説されていて(全80問)、また規定例なども備わっています。

 本書を読んでいると、この法改正にはかなり"緩い"部分があるように思えます(企業側から見れば"柔軟性がある"とも言えるが)。

 改正に沿った高齢者の雇用延長制度の導入に関しては、当初大企業が先行し中小企業はやや遅れ気味だったのが、'08年末時点では中小企業も大方が対応済みのようであるようですが、大企業・中小企業とも殆どが「定年延長」ではなく「継続雇用制度」(定年再雇用制度)という形での対応となっています。

 そこで、本書の「Q49」にあるような、「1年の有期雇用」はどんなことがあっても更新しなければならないのか」といった問いが出てくるわけで、年齢要件以外の理由があれば「どんなことがあっても更新しなければならない」とまでは言えないという、結局、「雇用確保」の趣旨よりも「有期雇用」の論理の方が優先されてしまう―そのことが、急激な雇用劣化不況の到来に際しては、改正法の形骸化をいやおう無く引き起こすということが目に見えるようです。

 更にこの法改正を巡っては曖昧さも多々あり、特例措置に沿って「労使協議が整わなかった」として労使協定の代わりに就業規則で継続雇用の定めをした企業も多いと思われますが、3年または5年の特例措置の期間が切れた場合、「Q55」にあるように、「就業規則にあるにもかかわらず、労使協定を締結する必要があるか」という疑問が生じざるを得ません。

 この問題について筆者は、労使協定を継続雇用制度の「存続要件」であるとすれば、今ある基準は期間満了とともに無効になり、速やかに労使協定を結ぶ必要が生じるが、労使協定はあくまでも継続雇用制度を「導入するための要件」存続要件に過ぎず、特例期間については就業規則で実施できるというのに過ぎなのであれば、3年または5年の特例措置の期間が切れても就業規則は有効であるとしていて、一体どっちなのかと言いたくなりますが、改正法施行の時点ではこう書くに留まらざるを得なかっただろうし、現時点でもこの曖昧さは残されているように思います。

 ということで、今しばらくの間はお世話になりそうな本です。

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This page contains a single entry by wada published on 2009年5月13日 00:14.

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