【1179】 △ 山川 隆一 『労働契約法入門 (2008/02 日経文庫) ★★★

「●労働法・就業規則」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1180】 浅井 隆 『労働契約の実務
「●日経文庫」の インデックッスへ

労働法全般の入門書として読めるが、「労働契約法」にもっと的を絞って欲しかった。

労働契約法入門2.JPG労働契約法入門 山川隆一.jpg労働契約法入門 (日経文庫)』 〔'08年〕

 法科大学院の教授による労働契約法についての解説書ということで、パート労働法や男女雇用機会均等法など関連する法令や最新の判例なども取り上げているとのことですが、要するに労働条件の決め方や労働契約の終了等、労働契約全般の解説書となっており、また賃金や労働時間についても労働基準法の基本部分を1つ1つ押さえているため、中身としては労働基準法を中心とした労働法全般の解説書といった感じでしょうか。

 大学の先生らしく、労働契約法成立の背景から最近の人事の動向までも踏まえるなど視野的には広く、且つ解り易い言葉で書かれており、その上で実務にも沿った形にはなってはいますが、網羅的である分、労働基準法等の細部の解説においては物足りなさも感じられました。

 結果として、同時期に刊行された『労働契約の実務』('08年/日経文庫)とかなり内容が重なっているような感じで、'08年3月に施行された労働契約法について書かれたものの中では比較的早く刊行された解説書であるため期待したのですが、その部分では期待はずれでした。

 第3章の「労働契約の基本理念と労働条件の決定・変更」が最も労働契約法に直接的に関わる部分かと思われますが、全8章のうちの1つに収められていて、「合意原則」と「合理性」の関係においてやや複雑な就業規則の不利益変更問題や、就業規則で定める基準に達しない労働契約の扱いなどについては、本当にさらっと触れているだけという感じ。

 ただ、労働法の基本部分を押さえるための入門書として見れば、コンパクトにきっちり纏まっている本で、『労働契約の実務』の方が本書以上に詰め込み過ぎのような感じもあるので、実務面での入門書として併読し、法の前提となる部分に関する知識や理解の至らないところを補完し合えばいいのかなと。
 そうであるにしても、このタイトルであるならば「労働契約法」にもっと的を絞って欲しかった気がします。

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1