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「●講談社現代新書」の インデックッスへ
社員同士の協力関係を、役割構造、評価情報、インセンティブの3つで捉える。
『不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書)』 ['08年]
なかなか惹きつけるタイトルで、こういう場合、読んでみたら通り一遍のことしか書いてない紋切り型の"啓蒙書"だったりしてガッカリさせられることがままありますが、この本は悪くなかったです。但し、やはり基本的には(いい意味での)"啓蒙書"であり、読んで終わってしまってはダメで、書かれていることで自分が納得したことを、常に意識し、実践しなければならないのでしょう。
社員同士での協力関係が生まれないために、職場がギスギスして、生産性も向上せず、ヤル気のある人から辞めていく―こうした協力関係阻害の要因を、役割構造、評価情報、インセンティブという3つのフレームで捉えた第2章(ワトソンワイアット・永田稔氏執筆)が、特にわかり易く、また、頷ける点が多かったです。
特に、「役割構造」の変化について、従来の日本企業の特徴であった、会社で仕事をする際に決められる「仕事の範囲」の「緩さ・曖昧さ」が協力行動を促すことにも繋がっていたことを指摘しているのには頷けて(但し、フリーライド、つまり、仕事してないのに仕事しているように見せる"ただ乗り"を許すことにも繋がっていた)、それが、成果主義が導入されると、今度は、個々は自分の仕事のことしか考えず、外からは、誰が何をしているのかよくわからなくなって、仕事が「タコツボ化」していると―。
それが、組織力の弱体化に繋がるとしているわけですが、これは、成果主義の弊害としてよく言われることであるものの、併せて、個々の仕事が高度化していることも、仕事が「タコツボ化」する要因として挙げているのには、確かにその通りかもしれないと思いました。
このことは、続く、インフォーマル・コミユニケーションを通じての社員同士の「評価情報」の共有化がもたらす効果や、金銭的報酬以外の、社内や仕事仲間の間での承認願望の充足がもたらす「インセンティブ」効果という話に、スムーズに繋がっているように思えました。
「仕事の高度化」ということで言えば、IT企業などは正にそうでしょうが、第4章で、組織活性化に成功している企業の事例が3社あり、その内2社は、グーグルとサイバーエージェントです。
両社の組織活性化施策は、人事専門誌などでは、もうお馴染みの事例となっていますが、本書におけるそれまでの繋がりの中で読んでみると、改めて新鮮でした。
ワトソンワイアットは、外資系の中では日本企業の人事制度構築に定評のあるファームですが、日本での強さのベースには、組織心理学に重きを置いている点にあるのかも。
《読書MEMO》
●八重洲ブックセンター八重洲本店 公式Twitterより(2018年5月21日)
【1階】講談社現代新書『不機嫌な職場』あなたの職場がギスギスしている本当の理由。社内の人間関係を改善する具体的な方法をグーグルなどの事例もあげて解説。