【1176】 △ 田中 和彦 『威厳の技術 [上司編] (2009/01 幻冬舎新書) ★★★

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オーソドックスだが、やや印象度が弱い。「技術書」と言うより「啓蒙書」?

威厳の技術 [上司編]ド.jpg威厳の技術.jpg威厳の技術 上司編 (幻冬舎新書)』 ['09年]  「人望」とはスキルである.jpg 伊東 明 『「人望」とはスキルである』 カッパ・ブックス 〔'03年〕

 以前に『「人望」とはスキルである』('03年/カッパブックス)という本を読み、結局「人望」は「スキル」で磨くことができるということを言っており、部下マネジメント、コーチングについて述べた本であったことが読んでから分かったのですが、「人望」という言葉の使い方に違和感というか、いやらしさのようのものを感じてしまいました。

 本書では冒頭で、マネジメントはセンスや才能ではなく、技術(スキル)であると言っており、本書での「威厳」というのは、前掲書と同じように部下マネジメント力、コーチング力を指していると思われますが、端的に言えば「部下になめられないこと」といった感じでしょうか。
 「威厳」という言葉にもやや違和感を覚えなくもないですが、こちらの言葉の使い方の方が、「人望」というより言葉的にはまだしっくりくるような...(最初にタイトルの言葉の使い方がわかる書き方をしているということもあるが...。それに、「人望」というと、コーチングよりメンタリング的なニュアンスに近いのではないか)。

 本文は「怖れを身に付ける」「部下を丸ごと知る」「本音でぶつかる」「リスクを背負う」「期待し、任せる」「叱り、ほめる」「守り、育てる」の8章からなり、例えば第1章の「怖れを身に付ける」ためにどうしたらよいかとして、①朝一番で出社する、②部下の名前をフルネームで書く、③自分の時間はすべて部下のための時間と考える、④ブレない判断の4つを挙げていますが、頷ける面はある一方、これって「技術」なの?という気も。
 序章の最後では、「最後の最後に、上司を上司たらしめるのは、腹のくくり方である」とも言っており、啓蒙書的要素を多分に含んだ本という印象を受けました(啓蒙書的な本でも読んでそれなり得るところはあると思うが)。

 著者は、大学卒業後リクルートに入社して人事課長を経験後、「週刊ビーイング」などの編集長を歴任、その後キネマ旬報社代表取締役を経て、現在プラネットファイブという会社の代表取締役をしている人。
 リクルートという会社でそれなりの経験もあり(年齢も50歳)、組織やチームを活性化させるための条件やモチベーション向上についての記述は極めてオーソドックスであり、また、ケースを挙げての部下の叱り方、ほめ方などについては、実際の自分の経験の裏打ちも感じ取れ、そうした意味では好感が持て、それなりの説得力もありました。

 ただ、あまりにオーソドックスで、やや印象度が弱いかなあ、目新しさに乏しいと言うか...。
 最近のコーチング理論では、従来の「上司-部下」という脇組みそのものを排除しようという傾向がありますが、本書は、完全に旧来の「上司-部下」関係というものを前提にし、その延長線上で、雇用の流動化によって弱くなっている「上司の威厳」をいかにして"回復"させるかということがテーゼとなっているようです。

 △評価はあくまで個人的なもので、部下マネジメントの基本を押さえる(整理する)、或いは、上司たる人が自分を振り返るという意味では、そんなに悪い本ではなかったかも知れません。

《読書MEMO》
●活性化したチームに必要な6つの条件(90p)
 ① メンバーの存在
 ② 目指すべき目標
 ③ コミュニケーション
 ④ リーダーシップ
 ⑤ マネジメント
 ⑥ モチベーション
●部下のモチベーションを上げる3原則 (204p)
 ① 目標の共有
 ② 情報の共有
 ③ 権限委譲

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