「●上司学・リーダーシップ」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2266】 ロバート・K・グリーンリーフ 『サーバントリーダーシップ』
個人の問題より組織(風土)の問題であることも少なからずあるのではないか。
『デキる上司は休暇が長い』 (2008/08 あさ出版) ['06年]
著者の前著『デキる上司は定時に帰る』('06年/あさ出版)は、「デキる上司」とはどういう人かということが一般論的に書かれていて、タイトルの「定時に帰る」はその現象面の1つに過ぎず、そのことについて深く突っ込んで書かれているわけではありませんでしたが、それに比べると本書は、上司が長期の休暇を取ることの効用が全般に渡って述べられていて、その点では、タイトルからハズレた内容ではありませんでした。
要するに「エンパワーメント(権限委譲)」が部下を育てるという論旨で、それを、ヘッドハンターとして多くの会社とその中で働く人を見てきた自らの経験から、「定時に帰るのがデキる上司である」としているわけですが、その意図はよくわかるものの、個人的には、世の中の全ての会社の実態として果たしてそう言い切れるかなあとも思いました。
確かに、個人的に仕事を自ら抱え込んで、それが部下の育成を疎外しているケースは枚挙に暇が無いかと思いますが、業務の広がりやスピード、専門性の変化が激しい昨今、ましてや年長者や非正社員など、部下および働き方の多様化が進む中で、後輩が少なく、人をマネジメントしたり育成したりする経験が少ないまま管理職になってしまったような人に負担がかかるのは、これは、リーダーシップというよりメンバーシップ、「個人」より「組織」の問題であることが少なからずあるような気がします。
「エンパワーメント(権限委譲)」の重要性に異議を唱えるわけではないですが、ジャン=フランソワ・マンゾーニが『よい上司ほど部下をダメにする』 ('05年/講談社)の中で権限委譲ができない上司のことを言っていた「失敗おぜん立て症候群」という言葉の方が、まだ本質を指摘してインパクトがあったような気がします。
ただ「休め」と言われても、成果主義のもとで結果を出さないと評価されないという立場に追い込まれている中間管理職が本書を読んで、現実と乖離の大きさのため、あまりピンとこないのではないかなあ。
むしろ、「休む」ことを義務化して評価要素の1つとしない限りは変わらないような、そうした組織風土の会社も多くあるということを、著者はどのぐらい認識しているのでしょうか。