【1153】 ◎ 森田 朋宏 『導入モデルでわかる 適格年金のやめ方 (2008/02 企業年金研究所) ★★★★★

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税制適格年金廃止を考える中企業向け。自社適合を探る仮想討議の内容が参考になる。

導入モデルでわかる適格年金のやめ方.jpg 『導入モデルでわかる 適格年金のやめ方』 ['08年]

 中小企業の退職金制度改革を、ケーススタディ形式でわかり易く説明したもので、同じく社内討議討を経ての新企業年金への道を事例形式(会話形式)で指し示したものとして『中小企業の退職金・適年制度改革実践マニュアル』(大津章敬 著/'06年/日本法令)がありましたが、これは、適格年金の中小企業退職金共済(中退共)への移行を、コンサルタントの導きにより経営陣が探る、というのが事例の流れでした。

 一方、本書の方は、3つの事例が用意されていて、何れも、現在の制度は「退職金一時金+税制適格年金」であり(退職金一時金は、退職給付制度全体の50%を超えていない)、そうした中で、3社3様に自社適合を模索しながらも(この本のケーススタディで提案をリードしているのは社内の人事部)、確定拠出年金(DC年金)への移行を中心に据えるか、或いは、適格年金の部分には中退共に移行するが、退職金一時金を確定拠出年金(DC年金)に移行するといった、確定拠出年金(DC年金)を入れる方向で、検討が進んでいきます。

 但し、これは前半のケーススタディ部分についてであり、後半の解説部分については、中退共、確定給付型企業年金についても解説されているほか、ケーススタディにおける選択肢や制度のサブシステムとして、確定給付や前払い退職金の話は出てきて、一足飛びに先に示した結論にいくわけでありません。
 この、自社適合を探るための人事部と経営陣や組合との討議内容が、たいへん参考になります。

 出発点が、本書のタイトル通り、「退職金・適年」ということで揃っているので、読者対象が絞り込まれていることになりますが、その分、制度本体の話だけでなく、新会計基準との絡みなど、退職金の制度問題と併せて中小企業が抱えるテーマについても、比較的突っ込んだ解説がされていています(但し、会話形式をとっているので難しくはならない)。

 適格年金を廃止して退職給付債務から解き放たれたい、本当は中退共に移行したいが、会社が一定規模以上であるために要件を満たさず選択できない、といった会社にはピッタリの本であり、確定拠出年金(DC年金)を入れるのであれば、今('09年)読まずしていつ読むのか、といった本でもあります。

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