【1088】 ○ ヴァレリオ・ズルリーニ 「激しい季節」 (59年/伊) (1960/04 イタリフィルム) ★★★★ (○ クロード・ルルーシュ 「男と女」 (66年/仏) (1966/10 ユナイテッド・アーティスツ) ★★★☆)

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トランティニャン未亡人相手2作。ロッシ・ドラゴが"凄い"「激しい季節」とCFを観ているような「男と女」。
激しい季節 ポスター 2.jpg ヴァレリオ・ズルリーニ★激しい季節(1959).jpg Estate Violenta2.jpg 男と女 DVD.jpg 「男と女」2.jpg
「激しい季節」ポスター/ビデオ(絶版)/「ESTATE VIOLENTA(激しい季節)」 ビデオ(輸入版)/「男と女 [DVD]」/輸入版ポスター

「激しい季節」2.jpgEstate Violenta.jpg 「激しい季節」(Estate Violenta、'59年/伊)の舞台は1943年のアドリア海に面した高級避暑地。別荘に滞在する上流階級の娘(ジャクリーヌ・ササール)が、パーティーの場に現れたファシスト党高官の息子(ジャン・ルイ・トランティニャン)に恋をするが、彼の方は浜辺で知り合った海軍将校の未亡人(エレオノラ・ロッシ・ドラゴ)に惹かれ、2人は深い関係に―。

Jean-Louis Trintignant & Eleonora Rossi Drago

「激しい季節」1.jpg それを知った娘ジャクリーヌ・ササールは泣きながら去り、後半は、ムッソリーニ政権の崩壊、新政権の誕生、イタリアの降伏という動乱の戦局の下、刹那的な恋に激しく燃える高官の息子トランティニャンと未亡人ロッシ・ドラゴの愛と別離が描かれています。

 とにかく、未亡人役のエレオノラ・ロッシ・ドラゴの魅力(色香)がその眼差しからボディに至るまで凄く、それまであまり脱がない女優だったそうですが、この映画に関しては、検閲でカットされている部分もあるぐらいで、彼女は'07年12月に82歳で亡くなっており、考えてみれば相当旧い映画なのですが、何か"今風"のセクシーさを醸す女優でした(この映画に出演した時は33、4歳ぐらい)。

Valerio Zurlini Estate violenta 2.jpgValerio Zurlini Estate violenta.jpg 2人の「出会い」は海岸で、独軍機の威嚇飛行に人々が怯え逃げる際に、転んで泣いていた幼子をトランティニャンが助けたのが、ロッシ・ドラゴの娘だったというもの、「別れ」は、トランティニャンが兵役逃れを図りロッシ・ドラゴと逃避行を図る際に、列車が米軍機の爆撃を受け大勢の死者が出て、その中にその娘の亡骸を見つけて、彼女が現実に(乃至"罪の意識"に)目覚めるという、「出会い」も「別れ」も共に「爆撃機」と「娘」が絡んだものです。双葉十三郎氏は、「後半になって愛国モラルが顔を出すと、凡庸化していしまう」とsていますが、これは兵役を嫌がっていたトランティニャンが列車の被爆事故を機に女性と別れ、戦線に加わるというストーリーがいかにもという感じがするからでしょう。

激しい季節 dvd _.jpg 戦時下の恋の物語ですが、当時のイタリアの上流階級の一部は、そうした戦局の最中に合コンみたいなパーティーをやったり、海水浴に興じたりしていたというのは、実際の話なのだろうなあと。ある種、集団的な"刹那主義"的傾向?(その反動で、或いはバランスをとるために、トランティニャンを兵役に行かせた?)。

 この作品は日本ではビデオが絶版になってから長らくDVD化されていないないけれど、なぜだろう(2017年にDVD化された)

激しい季節 HDリマスター [DVD]

「男と女」(1966年) ポスター/パンフレット①/パンフレット②
男と女 ポスター.bmp男と女 パンフ.jpg男と女 パンフレット.png「男と女」(Un homme et une femme、'66年/仏)もジャン・ルイ・トランティニャンが未亡人(スタントマンの夫を目の前で失った女アヌーク・エーメ)に絡むもので、こちらはトランティニャン自身も妻に自殺された男寡のカーレーサーという設定で、2人が知り合ったのは互いの子供が通う寄宿学校の送り迎えの場という、「激しい季節」同様に子供絡みです(カンヌ国際映画祭「グランプリ」(現在の最高賞パルム・ドールに相当)及び「国際カトリック映画事務局賞」、米国「アカデミー外国映画賞」「ゴールデングローブ賞外国語映画賞」受賞作)。

「男と女」3.bmp「男と女」4.jpg 一作品の中でモノクロ、カラ―、セピア調などを使い分けるといった凝った映像のつくりです。但し、ストーリーそのものは個人的には結構俗っぽく感じられ、トランティニャンが鬱々として煮えたぎらずしょぼい恋愛モノという印象しか受けないのフランシス・レイ.jpgですが、フランシス・レイ(1932- )のボサノバ調のテーマ曲と共に間に挿入されるイメージフィルムのような映像が美しいです。クロード・ルルーシュ(1937-2018)はコマーシャルフィルムのカメラマンから映画監督に転身した人ですが、この作品自体がプロモーションフィルムまたはコマーシャルフィルムであるような印象も受けました。当時としては非常に斬新だったのだと思いますが、今観るとそれほどでないと思われるかも。しかし、そのことは、それだけ後の多くの映像作家がこの映画から様々な技法を吸収したということの証であるのかもしれません(でもやっぱり音楽は今でもいい。音楽だけの評価だと★★★★★)。

男と女24.jpg 最初から映像美と音楽を調和させることが最大の狙いで、ストーリーの方は意図的に通俗であることを図っていたのかも。ルイ・マル監督の「恋人たち」('58年/仏)などがその典型例ですが、「通俗」を繊細かつ美しく撮るのも映画監督の技量の1つでしょう。でも、この監督、この後に大した作品がないんだよなあ(一応、知られているところでは「愛と哀しみのボレロ」('81年)があるが)。仮に「男と女」だけ撮って夭折していたらフランス映画史上の天才と呼ばれていたに違いないとの声もある監督です。

 「激しい季節」「男と女」共にジャン・ルイ・トランティニャン主演の作品ですが、トランティニャン自身は、繊細な演技が出来る、日本人が感情移入しやすい俳優であるとは思うものの、この2作については、片や相方のエレオノラ・ロッシ・ドラゴの突き刺すような魅力が圧倒的で、片や映像美と音楽の魅力が圧倒的な作品であるような気がしました。

「激しい季節」ポスター(1960年劇場用初版)/VHSカバー
激しい季節 ポスター.jpgヴァレリオ・ズルリーニ★激しい季節(1959).jpg
                    
 
Estate violenta(1959) エレオノラ・ロッシ・ドラゴ/ジャン・ルイ・トランティニャン ジャクリーヌ・ササール
Estate violenta(1959).jpg激しい季節001.jpg激しい季節002.jpg「激しい季節」●原題:ESTATE VIOLENTA●制作年:1959年●制作国:イタリア●監督:ヴァレリオ・ズルリーニ●製作:シルヴィオ・クレメンテッリ●激しい季節 パンフ.jpg脚本:ヴァレリオ・ズルリーニ/スーゾ・チェッキ・ダミーコ/ジョルジョ・プロスペリ●撮影:ティノ・サントーニ●音楽:マリオ・ナシンベ六本木駅付近.jpg六本木・俳優座シネマテン2.jpg俳優座劇場.jpgーネ●時間:93分●出演:ジャン・ルイ・トランティニャン/エレオノラ・ロッシ・ドラゴ/ジャクリーヌ・ササール/ラフ・マッティオーリ/フェデリカ・ランキ/リラ・ブリナン●日本公開:1960/04●配給:イタリフィルム●最初に観た場所:六本木・俳優座シネマテン(84-11-17)(評価:★★★★)
俳優座シネマテン(六本木・俳優座劇場内) 1981年3月20日オープン。2003年2月1日休映(後半期は「俳優座トーキーナイト」として不定期上映)。  

フランシス・レイ 003.jpg「男と女」1.jpg男と女  66仏.jpg「男と女」●原題:UN HOMME ET UNE FEMME(英:A MAN AND A WOMAN)●制作年:1966年●制作国:フランス●監督・製作:クロード・ルルーシュ●脚本:クロード・ルルーシュ/ピエール・ユイッテルヘーヴェン●撮影:クロード・ルルーシュ●音楽:フランシス・レイ●時間:103分●出演:ジャン・ルイ・トランティニャン/アヌーク・エーメ/エヴリーヌ・ブイックス/マリー・ソフィー・ポシャ/リチャード・ベリー/ロベール・オッセン●日本公開:1966/10●配給: ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:高田馬場パール座(78-10-02)(評価:★★★☆)●併映:「さよならの微笑」(ジャン・シャルル・タッシェラ)

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フランシス・レイ(フランスの作曲家)同国のメディアによると、2018年11月7日までに死去、86歳。亡くなった日や死因は明らかにされていない。

ジャン・ルイ・トランティニャン(仏男優)2022年6月17日、仏南部ガール県の自宅で死去。91歳。

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