【1075】 △ 佐々木 倫子 (原作:綾辻行人) 『月館の殺人 (上・下)』 (2005/08 小学館) ★★★(○ シドニー・ルメット(原作:アガサ・クリスティ) 「オリエント急行殺人事件」 (74年/英・米) (1975/05 パラマウント=CIC) ★★★☆)

「●コミック」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【693】 佐藤 秀峰 『ブラックジャックによろしく (1)』
「○コミック 【発表・刊行順】」の インデックッスへ 「●シドニー・ルメット監督作品」の インデックッスへ「●ショーン・コネリー 出演作品」の インデックッスへ「●ローレン・バコール 出演作品」の インデックッスへ 「●ジャクリーン・ビセット 出演作品」の インデックッスへ 「●は行の外国映画の監督①」の インデックッスへ「○外国映画 【制作年順】」のインデックッスへ「●く アガサ・クリスティ」の インデックッスへ

佐々木倫子の部分が星3.5で、綾辻行人の部分が星2.5。『オリエント急行の殺人』へのオマージュか。
月館の殺人.jpg 佐々木 倫子 (原作:綾辻行人) 『月館の殺人』.jpg   オリエント急行殺人事件  1974 dvd.jpg オリエント急行殺人事件01.jpg
月館の殺人 上 IKKI COMICS』 『月館の殺人 (下) 』「オリエント急行殺人事件 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
月館の殺人3.jpg 沖縄育ちの雁ヶ谷空海は、鉄道嫌いの母の影響もあり、未だかつて電車に乗ったことがなかったが、母の死後、弁護士に「母方の祖父が生きていて、財産相続の件でぜひ北海道まで来てほしい」と伝えられ、祖父の待つ月館へ列車で向かうことになり、そのSL《幻夜号》には、祖父の招待客らしい6人の鉄道マニアも乗っていたが、そこで密室殺人事件が―。

 '04(平成16)年12月から翌年にかけて「月刊IKKI」('05年2月号〜'06年6月号)に連載された、『おたんこナース』の佐々木倫子の作画による本格ミステリの漫画化作品(原作・綾辻行人)で、上巻を読んでから下巻にいく間に随分間が空いてしまい(下巻は上巻刊行の約1年後の'06年7月刊行)、そうしたら、下巻に入って状況が随分違っているではないかとやや唖然とさせられました(雑誌連載は読んでないんで)。

 鉄道ミステリと言えば、本書にも出てくる『オリエント急行殺人事件』や『Xの悲劇』が有名ですが、「オリエント急行」とは車両だけ同じでストーリーは違うだろうことは予想に難くないのですが、『Xの悲劇』と似たようなことになるのかなと、一瞬思ったりもして...。

 結局それなりにオリジナリティはあったけれども、前提状況にかなり無理があり、相当「空海」という主人公がボケっとしていないと成り立たないような話にも思えました(雪の中で停止している列車というのは、クリスティの『オリエント急行の殺人』へのオマージュだろうが)。むしろ、鉄道マニアの類型が鉄道に関するマニアックな薀蓄に絡めて面白く描き分けられていて、その部分では最後まで楽しめた感じです。

 Amzon.comかどこかの評で、佐々木倫子の部分が星3.5で、綾辻行人の部分が星2.5という評価があったように思いますが、個人的には全く同感で、装丁などは立派ですが、内容的には、息抜き程度には悪くないといったところでしょうか(『おたんこナース』の単行本同様、大判で読み易いし)。

オリエント急行殺人事件 映画 アルバート・フィニー.jpg コミックであるせいか、読んでいる間ずっとクリスティの原作『オリエント急行の殺人』でなく、シドニー・ルメット監督の映画「オリエント急行殺人事件」('74年/オリエント急行殺人事件 snow.jpg英・米)の方が頭に浮かんでいました(原作を読んだ時はあまり雪のシーンをイメージしなかった?)。アルバート・フィニー(1936-2019)がポワロを演じたほか(アカデミー主演男優賞にノミネートされたが、彼のポアロ役はこの一作きりで、以後、アガサ・クリスティ原作の映画化は「ナイル殺人事件」('78年)、「地中海殺人事件」('82年)、「死海殺人事件」('88年)と全てピーター・ユスティノフがポアロを演じている)、被害者役のリチャード・ウィドマークをはじめ、アンソニー・パーキンス、ジョン・ギーオリエント急行殺人事件 バーグマン.jpgルグッド、ショーン・コネリー、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、ウェンディ・ヒラー、ローレン・バコール、イングリッド・バーグマン、マイケル・ヨーク、ジャクリーン・ビセット、ジャン=ピエール・カッセル等々が出演したオールスターキャスト映画でしたが、神経質で少しエキセントリックなところがある中年のスウェーデン人宣教師を演じたイングリッド・バーグマンが印象的でした。イングリッド・バーグマンは事件の中心人物的な公爵夫人役を打診されたけれども、この地味な宣教師役を強く希望したそうで、その演技でアカデミー助演女優賞を獲得しています。


オリエント急行殺人事件 2017 00.jpg(●2017年にケネス・ブラナー監督・主演のリメイク作品「オリエント急行殺人事件」('17年/米)が作られた。Amazon.comのレビューなどを見ても評価が割れているが、本国でも賛否両論だったようだ。映画批評集サイトのRotten Tomatoesのサイト側によオリエント急行殺人事件 201700.jpgる批評家の見解の要約は「映画史の古典となった1974年版に何一つ新しいものを付け足せていないとしても、スタイリッシュなセットとオールスターキャストのお陰で、『オリエント急行殺人事件』は脱線せずに済んでいる」となっている。個人的感想も概ねオリエント急行殺人事件 2017 1.jpgそんな感じだが、セットは悪くないけれど、列車が雪中を行くシーンなどにCGを使った分、新作の方が軽い感じがした。旧作にも原作にもないポワロのアクションシーンなどもあったりしたが、最も異なるのは終盤であり、ポワロが事件にどう片を付けるか悩む部分が強調されていて、ラストの謎解きもダ・ヴィンチの「最後の晩餐」を模した構図の中でケネス・ブラナーの演劇的な芝居が続く重いものとなっている。旧作は、監督であるオリエント急行殺人事件 2017 l.jpgシドニー・ルメットが、「スフレのような陽気な映画」を目指したとのことで、ポワロの事件解決後、ラストにカーテンコールの意味合いで、乗客たちがワインで乾杯を行うシーンを入れたりしているので、今回のケネス・ブラナー版、その部分は敢えて反対方向を目指したのかもしれない。ただ、もやっとした終わり方でややケネス・ブラナー監督の意図がやや伝わりにくいものだった気もする。)


オリエント急行殺人事件 スペシャル・コレクターズ・エディション[AmazonDVDコレクション]
オリエント急行殺人事件  1974 dvd.jpgオリエント急行殺人事件02.jpg「オリエント急行殺人事件」●原題:MURDER ON THE ORIENT EXPRESS●制作年:1974年●制作国:イギリス・アメリカ●監督:シドニー・ルメット●製作:ジョン・ブラボーン/リチャード・グッドウィン●脚本:ポール・デーン●撮影:ジェフリー・アンスワース●音楽:リチャード・ロドニー・ベネット●原作:アガサ・クオリエント急行殺人事件03.jpgリスティ「オリエント急行の殺人」●時間:128分●出演:アルバート・フィニー/リチャード・ウィドマーク/アンソニー・パーキンス/ジョン・ギールグッド/ショーオリエント急行殺人事件 ショーン・コネリー.jpgオリエント急行殺人事件 バコール.jpgン・コネリー/ヴァネッサ・レッドグレーヴ/ウェンディ・ヒラー/ローレン・バコール/イングリッド・バーグマン/マイケル・ヨーク/ジャクリーン・ビセット/ジャン=ピエール・カッセル●日本公開:1975/05●配給:パラマウント=CIC(評価:★★★☆)
Richard Widmark/Jacqueline Bisset
murder victims, Richard Widmark.jpg Jacqueline Bisset、Murder on the Orient Express.jpg
   
オリエント急行殺人事件 [DVD]」Kenneth Branagh
オリエント急行殺人事件 2017 dvd.jpgオリエント急行殺人事件 20172.jpg「オリエント急行殺人事件」●原題:MURDER ON THE ORIENT EXPRESS●制作年:2017年●制作国:アメリカ●監督:ケネス・ブラナー●製作:リドリー・スコット/マーク・ゴードン/サイモン・キンバーグ/ケネス・ブラナー/ジュディ・ホフランド/マイケル・シェイファー●脚本:マイケル・グリーン●撮影:ハリス・ザンバーラウコス●音楽:リパトリック・ドイル●原作:アガサ・クリスティ「オリエント急行の殺人」●時間:114分●出演:ケネス・ブラナー/ペネロペ・クルス/ウィレム・デフォー/ジュディ・デンチ/ジョニー・デッ/ジョシュ・ギャッド/デレク・ジャコビ/レスリー・オドム・Jrオリエント急行殺人事件 2017michelle-pfeiffer.jpgミシェル・ファイファー/デイジー・リドリー/トム・ベイトマン/オリヴィア・コールマン/ルーシー・ボイントン/マーワン・ケンザリ/マオリエント急行殺人事件 2017 deppu.jpgヌエル・ガルシア=ルルフォ/セルゲイ・ポルーニン/ミランダ・レーゾン●日本公開:2017/12●配給:20世紀フォックス(評価:★★★)

Johnny Depp

Michelle Pfeiffer
 
 

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1