「●あ行の現代日本の作家」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2499】 赤川 次郎 『東京零(ゼロ)年』
「●「芥川賞」受賞作」の インデックッスへ
老若男女のWデート? 春夏秋冬に合わせての起承転結。取り立てて欠点の無い作品。
『ひとり日和』['07年/河出書房新社] 『ひとり日和〈上〉 (大活字文庫)』『ひとり日和〈下〉 (大活字文庫)』['07年/大活字文庫]
2006(平成18)年下半期・第136回「芥川賞」受賞作。
20歳の私(知寿)は、親戚の71歳の吟子さんの家に居候することになった。駅が見える平屋での生活の中、彼氏と別れた私はキオスクで働き、今度は駅員の藤田君という男性に恋をして、一方、吟子さんは吟子さんで同年代のホースケさんという男性と淡々とした恋をしている―。
あまり期待してなかったためか、予想以上の出来。
最初のうちは知寿自身のありきたりの恋の話でアクビが出かかりましたが、70代の吟子さんの恋の話が始まって興味を引かれ、いつの間にか70代カップルと20代カップルのダブルデートみたいな状況(庭で花火をするだけだが)になっており、そこに至るまでが極めて自然に描かれていて、「こんなの、ないよ」と思わせる部分が殆ど無かったです。
年の離れた女性同士で、時に張り合っているようにも見え、化粧水を勝手に使った使っていないとかでもめたりしているのも、何となくユーモラス。
春夏秋冬に合わせて起承転結がカッチリあって、構成上もまずまず。
主人公にそれほど魅力があるわけではないけれど、読んでいて厭な気分にもならないし、何か強いインパクトがあるわけではないけれど、取り立てて欠点も無い作品と言えるのでは。
芥川賞選考委員会では、石原慎太郎、村上龍両氏が強く推挙し、他の委員も池澤夏樹氏を除いてあまり否定的な意見を述べる人はいなかったようですが、村上氏の言う「ヒロインは最後に自らをどこかで肯定し、外へ向かう。嘘のない自立を描いた、稀有な作品」という賛辞に触れると、果たしてそこまで響くものがあったかなあ、ちょっと褒めすぎではないかとは思いましたが。
【2010年文庫化[河出文庫]】