【1062】 ○ ハワード・ホークス (原作:アーネスト・ヘミングウェイ) 「脱出」 (44年/米) (1947/11 セントラル) ★★★★

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ボギーとバコールの会話が気持ちよく噛み合っている作品(脚本自体が良く出来ていた?)

脱出2.jpg 脱出.jpg 「脱出」 (1944).jpg 私一人.jpg
脱出 特別版 [DVD]」/ポスター/ハンフリー・ボガート、ローレン・バコール/『私一人』['87年/文藝春秋]

脱出3.jpg カリブ海にある仏領マルチニック群島のある島で観光用チャーター・ボートの船長をしているハリー(ハンフリー・ボガート)は、ホテル歌手のマリー(ローレン・バコール)に彼女がアメリカへ帰るための金を渡すため、レジスタンスのリーダーを逃がす仕事を請け負うが、ハリーが密航を幇助したと考えた島の警察が彼の仲間を拉致して拷問したことを知り、怒りを爆発させる―。

To Have and Have Not.jpg アーネスト・ヘミングウェイが1937年に発表した小説『持つことと持たざること(To Have & Have Not)』が原作で(脚本は、同じくノーベル賞作家のウィリアム・フォークナー)、ヘミングウェイは1926年発表の『日はまた昇る』以降、より正確には1927年刊行の『男だけの世界』から、その短編集のタイトル通りマチズムの傾向を強めていますが、この作品もその例に漏れるものではなく、一方で、この『持つことと持たざること』というタイトルは主に「貧富の差」のことを言っており、彼の作品に社会的傾向が最も見られた時期のものでもあります。

Hemingway, Ernest. To Have and Have Not (New York : Charles Scribner's Sons, 1937)

Tohaveandhavenot.jpg 原作の舞台はキーウエストやキューバになっており、それが仏領マルチニックに変えられたとしても、第2次世界大戦(ビシー政権下)の話なので仏領の島にドイツ傀儡政府の手先がいてもおかしくないのですが(この映画の制作年は1944年)、原作の社会的色合いは後退し、ハンフリー・ボガートの男気、乃至は、ローレン・バコールとのロマンスが前面に出ています。
 「持つと、持たざると」の目的語は「富・財産」から「勇気」に置き換えられている(?)感じで、これはフォークナーの意向というより、彼に脚本を依頼したハワード・ホークスの意向に違いないと、個人的には推測しています。

bacall.jpg この映画での共演を機に2人は結婚し、その結婚生活はボギーの死まで続きますが、考えてみれば、雑誌のカバーガールからスカウトされたローレン・バコールは、この作品がメジャー作品初出演だった(公開示のポスターでは下隅に小さく名前があるだけ)―それにしては、スクリーン上の彼女は貫禄充分と言うか、25歳年上のボギーと堂々と渡り合っているように見えました。
『脱出』(1944).jpg しかし、1979年に刊行された自伝『ローレン・バコール/私一人』('84年/文芸春秋)の中では、撮影の時にはいつもがちがちに緊張しまくっていていたことを告白しています。
 2人の会話が気持ちよく噛み合っている作品でしたが、やはり、フォークナーの脚本自体が良く出来ていたということでもあるのではないでしょうか(因みにヘミングウェイとフォークナーはライバル関係でもあった)。
 「三つ数えろ」('46年)、「キー・ラーゴ」('48年)などと比べてどちらが上か迷う作品。「IMDb」の評価では、「脱出」8.0、「三つ数えろ」8.0、「キー・ラーゴ」7.9となっていました。

 『ローレン・バコール/私一人』によれば、ボギーが亡くなるその朝、出かける妻ローレン・バコールに声をかけた「バイバイ、キッド」が彼からの最後の"別れの言葉"になったそうですが、これは「脱出」でバコールが演じた歌手マリーの愛称だったとか。

「三つ数えろ」('46年)(ハワード・ホークス監督)/「キー・ラーゴ」('48年)(ジョン・ヒューストン監督)
『三つ数えろ』(1946) 11.jpg  key largo movie.jpgキー・ラーゴ2.jpg

脱出 輸入版ビデオジャケット.jpg脱出 輸入版ビデオジャケット2.jpgTo Have and Have Not.jpg「脱出」●原題:TO HAVE AND HAVE NOT●制作年:1944年●制作国:アメリカ●監督・製作:ハワード・ホークス●脚本:ウィリアム・フォークナー●撮影:シド・ヒコックス●音楽:フランツ・ワックスマン●原作:アーネスト・ヘミングウェイ●時間:101分●出演:ハンフリー・ボガート/ローレン・バコール/ウォルター・ブレナン/マルセル・ダリオ/ドロレス・モラン/ホーギー・カーマイケル/ダン・セイモア/シェルドン・レナード●日本公開:1947/11●配給:セントラル●最初に観た場所:三百人劇場 (89-03-14)●2回目:歌舞伎町ーア2 (89-04-08) (評価:★★★★)

三百人劇場2.jpg三百人劇場.jpg三百人劇場(文京区・千石駅付近) 2006(平成18)年12月31日閉館

新宿ト―ア.jpg歌舞伎町トーア2 歌舞伎町・第二東亜開館(歌舞伎町東映、1996年1月~新宿トーア)上の歌舞伎町日活を「歌舞伎町トーア1・2」に分割 1990年代半ばに閉館 (新宿トーアは2009(平成21)年4月17日閉館)

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ローレン・バコール 2014年8月12日、米ニューヨークの自宅で脳卒中のため死去。89歳。

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