【1058】 ◎ バスター・キートン 「キートンのセブン・チャンス (栃面棒/Seven Chances)」 (25年/米) (1926/07 ヤマニ洋行) ★★★★☆

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キートン映画では、面白さ、スリル、スピードともこの作品が一番だと思う。

 キートンのセブン・チャンス チラシ.jpg '73年リバイバル公開時チラシ

キートンのセブン・チャンス01.jpg キートン演じる破産寸前の青年実業家のもとにある日見知らぬ弁SEVEN CHANCES  Buster Keaton.jpg護士が訪れ、27歳の誕生日の午後7時までに結婚すれば700万ドルの遺産が彼に与えられるという親戚の遺言書を示すが、その誕生日というのは何と今日だった! 彼の"想い娘"は金目当ての結婚は嫌だと言い、仕方なく新聞にその旨の「花嫁募集」広告を出したところ、7000人もの花嫁候補に追われる羽目になる―。

「キートンのセブンチャンス (栃面棒)」.jpg ということで、"7並び"から「セブン・チャンス」というタイトルになるわけですが、日本公開時のタイトルは「キートンの栃面棒」で、"栃面棒"というのは"栃の実"で作る栃麺という蕎麦の類をこねる棒のことで、転じて「面食らう」ことらしいですが、当時の日本では一般的に使われていたのかなあ、こんな言葉が。

セブン・チャンス.jpg キートンがウェディング・ドレスを着た大勢の花嫁候補に追いかけられるシーンは、彼のスラップスティック・コメディの真骨頂ですが、それ以上にスゴイのが、丘陵地に差し掛かったところで、花嫁が岩に転じたのかどうかよくわからないけれども、ゴロゴロ転がり落ちてくる無数の巨大岩石(全部で1500個)を彼がよけるシーンで、コメディとしてもそうですが、それ以上にアクション映画としてスゴイ! 転がってくる無数の岩を次々とかわす場面などはシュールでもあり、一度見ておいて損は無いです。

 実はこの大小合わせて1500個もの石がキートンを追いかけてくるシーン、全くの偶然から生まれたとのことです(以下、『バスター・キートン自伝』より)。
 ―― 花嫁募集の広告で集まってきた女性の大群から逃げるという短い場面があってね。私は彼女たちを野外に連れ出して、追い掛けっこの撮影を始めた。丘の斜面を駆け下りている時だった。丘には石がいくつもあって、私はその一つに偶然にぶつかってしまったんだ。それが転がり出して、別の二つの石にぶつかった。後ろを振り返ると、さっきの三つの石が転がり落ちてくる。ボーリングのボールぐらいのが三つ、私の方に向かってくるんだ。必死に走って逃げるしかなかった―。

キートンのセブン・チャンス02.jpg 「海底王キートン」('24年)がヒットしたにしても依然としてチャップリン、ロイドに比べるとややマイナーだったキートンが、人気面で彼らと肩を並べる契機となった作品であり、キートン映画の中で「大列車強盗(将軍)」とこの作品のどちらを最高傑作とするか迷うところですが、個人的には面白さ、スリル、スピードともこの作品が一番だと思います。チャップリンのように"感動することを迫られる"ようなウェット感も無く、ただただ驚き笑えるという点では、この岩石落しのシーンも含め、スラップスティック・コメディの傑作と言えるでしょう。
 
 
キートンのセブン・チャンス/キートンの蒸気船(1973).jpgキートンのセブン・チャンス.jpgキートンのセブン・チャンス [DVD]
「キートンのセブン・チャンス/キートンの蒸気船」 (1973年公開時チラシ)

 
「キートンのセブン・チャンス(栃面棒)」●原題:SEVEN CHANCES●制作年:1925年●制作国:アメリカ●監督:バスター・キートン●製作:ジョセフ・M・シェンク●脚本: ジーン・ハヴェッツ/クライド・ブラックマン/ジョセフ・ミッチェル●撮影:エルジン・レ渋谷ユーロスペース03.jpgスリSeven Chances (1925).jpgSEVEN CHANCES.jpg ー●音楽:ロバート・イズラエル●原作:ロイ・クーパー・メグルー●時間:57分●出演:バスター・キートン/ロイ・バーンズ/ルース・ドワイヤー/フランキー・レイモンド/スニッツ・エドワーズ/ジーン・アーサー●日本公開:1926年7月15日●配給:ヤマニ洋行●最初に観た場所:渋谷ユーロスペース(84-01-16)(評価:★★★★☆)●併映:「キートンの蒸気船(船長)」(バスター・キートン)
Seven Chances (1925)
旧・渋谷ユーロスペースシアターN渋谷 1982(昭和57)年渋谷駅南口桜丘町にオープン、2005(平成17)年11月移転のため閉館。2006(平成18)年1月から渋谷円山町「Q-AXビル」に再オープン。旧ユーロスペース跡地に、2005年12月3日「シアターN渋谷」がオープン(2012年12月2日閉館)

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