【1056】 ○ グェン・ホン・セン 「無人の野」 (80年/ベトナム) (1982/08 「無人の野」普及委員会) ★★★★

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自分まで沼に浸かっている気分になった。プロパガンダに走っていないのがいい。
無人の野 パンフ.bmp 無人の野.jpg 無人の野 ポスター.jpg CANH DONG HOANG2.png Lam Toi
映画パンフレット 「無人の野」 監督 グェン・ホン・セン 出演 グェン・トゥイ・アン/ラム・トイ/グェン・ホン・トゥアン/ダオ・タイン・トゥイ/ホン・チー/ロバート・ハイ」「【映画チラシ】無人の野/監督・グェン・ホン・セン

CANH DONG HOANG1.jpgグェン・ホン・セン 「無人の野」 (80年/ベトナム).jpg 舞台はベトナム戦争後期の1972年のメコンデルタ。葦の茂る水上家屋に住む若い家族(夫婦は解放戦線の連絡員をしている)の愛情溢れる暮らしと、命の危険に晒されながらも連絡員としての任務を果たそうとするしたたかな様を、リアルに描いています(1981年・第12回「モスクワ国際映画祭 最優秀作品賞」受賞作)。

 アメリカ軍のヘリに襲撃されたりもしながらも、彼らの目を巧みにくらまし(ヘリが襲ってくると大人は沼に潜って竹筒で呼吸し見つからないようにするのだが、幼児はビニール袋に入れてそのまま沼に沈めて隠すというのがスゴかった)、自活するために水稲作を行無人の野1.jpgいながらも、時に負傷者を助け、更には解放戦線の作戦を援護するなど、いつも沼地に腰まで浸かりながら八面六臂の活躍を見せます。ああ、こうしてアメリカ軍の侵攻を阻んだのだなあと思わせる"戦術解き明かし"のような内容ですが、最後に夫がヘリに囲まれて悲劇が―。

無人の野 撮影風景.jpg 映画的には、水面の高さでのカメラワークが素晴らしい(自分まで沼に浸かっている気分になった)一方で、ヘリからの空撮と地上から見たヘリとの距離感が整合しないなどの粗い作りの部分もありますが(予算的・技術的要因によるものかも)、そうしたことを勘案しても佳作だと思います。

「無人の野」撮影風景

 ベトナム戦争が終わって5年後に作られた作品であることを思えば、当時のかなり高い水準に達していると思うし、日本で観ることができた当時の数少ないベトナム映画の1つという点でも貴重な作品。ベトナム側の視点で作られた映画であるにも関わらず、プロパガンダに走らず、撃墜された米軍ヘリのパイロットの家族の写真を映し出すなど、普遍的な平和への願いが込められているように感じました。

 '07年にNHK‐BSで再放映されましたが、今やすっかり友好国同士になったなあ、アメリカとベトナムは。やはり、経済的互恵というのは大きいのか。それで平和が保たれるならそれに越したことはないとは思いますが...。

グェン・ホン・セン 「無人の野」.jpg「無人の野」●原題:CANH DONG HOANG●制作年:1980年●制作国:ベトナム●監督:グェン・ホン・セン●脚本:グェン・クァン・サン●撮影:ズオン・トゥアン・バ●音楽:チン・コン・ソン●時間:95分●出演:グェン・トゥイ・アン/ラム・トイ/グェン・ホン・トゥァン/ダオ・タイン・トゥイ●日本公開:1982/08●配給:「無人の野」普及委員会●最初に観た場所:高田馬場ACTミニシアター(83-03-19)(評価:★★★★)
ACTミニ・シアター.jpgACTミニ・シアター2.jpg早稲田通りビル.jpg高田馬場(西早稲田)ACTミニシアター 1970年代開館。2000(平成12)年頃 閉館(活動休止)




  
ACTミニシアターのチラシ.gif

ACTミニシアターのチラシ http://d.hatena.ne.jp/oyama_noboruko/20070519/p1 大山昇子氏「女おいどん日記」より

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