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「CSI」や「NCIS」などの科学捜査ドラマの先駆けでもあった。
『証拠死体 (講談社文庫)』['92年]
1991年に発表されたパトリシア・コーンウェルの「検屍官ケイ・スカーペッタ・シリーズ」の第2弾(原題:Body of Evidence)。
90年代の米国ミステリ界を最も席巻した作家をベストセラー量産度から言えば、『法律事務所』('91年)、『ペリカン文書』('92年)、『依頼人』('93年)などで知られるジョン・グリシャムですが、女流ではこのパトリシア・コーンウェルでしょう。
このシリーズは15作ほど刊行されていますが、シリーズの最初の頃のものの方に傑作が多いような気がし、この第2作『証拠死体』は、第1作でシリーズの主要登場人物の紹介も終わっているので、ケイが惨殺された美人の売れっ子作家の死体に検屍官として向き合うという、事件の核心部分からいきなり入り、その後もテンポがいい。
『検屍官』のところで、このシリーズが、女性が主役として活躍するクライム・ドラマ(「Law & Order:性犯罪特捜班」や「BONES」)の先駆となったと書きましたが、本書では、前作以上に科学捜査の実態が克明に描かれていて、こうした描き方は、「CSI:科学捜査班」(「CSI:マイアミ」「CSI:NY」といったスピンアウトもある)や「NCIS-ネイビー犯罪捜査班」(これ自体が「犯罪捜査官ネイビーファイル」のスピンアウト)などの先駆でもあったと言えるのではないかと思いました。
第一、ケイの勤務する「検屍局」が「犯罪科学研究所」と同じビルにあり、そこには例えば「繊維班」などがあって、犯行現場に残った繊維を採取してその組成から犯行に関わる衣服や絨毯を特定する、そのやり方などは極めてシステマティック。
「NCIS」の女性分析官アビー(ポーリー・ペレット)などがやっている科学分析に比べれば、本書にある科学分析は、今でこそ"原始的"な類なのかも知れませんが、それまでは、観察眼の鋭い探偵や刑事が出てきて、「この糸は何だろう」みたいに偶然見つけた微小残留物から事件の読み解きが始まるといった展開ばかりだったので、こうして残留物を収集し分析することがシステムとして行われている様は、当時としては目新しかったです。
事件の展開は複雑ですが、大風呂敷を拡げてたたみきれなくなっているようなシリーズ後半の作品に比べると、本作は一応しっかり"たたんでいる"し、何よりもケイと刑事マリーノの会話が楽しめました。
第1作ではセクハラ気味なところもあったマリーノだけど、この作品では、ケイの庇護者的立場というのがかなりはっきり出ていたように思います(既に、第1作でケイを助け、"いい人"であることは読者にはわかっているわけだが)。
「CSI:科学捜査班」CSI: Crime Scene Investigation (CBS 2000/10~ ) ○日本での放映チャネル::WOWOW(2002~)/AXN/テレビ東京など
「NCIS~ネイビー犯罪捜査班」Navy NCIS: Naval Criminal Investigative Service (CBS 2003~ )○日本での放映チャネル:FOXチャンネル
「NCIS ‾ネイビー犯罪捜査班 シーズン1 コンプリートBOX[DVD]」