【1026】 ○ ジェフリー・アーチャー (永井 淳:訳) 『ロスノフスキ家の娘 (上・下)』 (1983/02 新潮文庫) ★★★★

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やはり選挙モノはミステリ並みに面白い。女性大統領はまだ先?
ロスノフスキ家の娘.jpg ロスノフスキ家の娘 (下) (新潮文庫)_.jpg  J・アーチャーs.jpg
ロスノフスキ家の娘(上)(新潮文庫)』『ロスノフスキ家の娘(下)(新潮文庫)』ジェフリー・アーチャー作品(新潮文庫)
The Prodigal Daughter (Kane & Abel #2)
The Prodigal Daughter.jpgThe Prodigal Daughter .jpg ポーランド移民からホテル王になったケインの娘フロレンティナ。彼女が恋し合った相手のリチャードという青年が、実は父の宿敵である銀行家ウイリアム・ケインの息子であり、互いの親たちは子供たちの結婚を許さない。それでも反対を押し切って結婚した彼女は、夫の助けでビジネスに成功する。その後、旧友の勧めで上院議員に立候補し当選する。やがて彼女は'96年のアメリカ大統領選挙に出馬し、アメリカ初の女性大統領を目指す闘いに臨む―。

 1982年夏に発表されたジェフリー・アーチャーの4番目の長編(原題"The Prodigal Daughter"は「放蕩娘」の意)で、第3作『ケインとアベル』('79年)の続編。第5作『めざせダウニング街10番地』('84年)までミステリをやや離れた経済・政治ドラマといった作風ですが、やはり選挙モノはミステリ並みに面白いです(特に、英国上下両院での議員経験がある作者が書くと)。

クリントン上院議員(右から3人目)の選挙事務所は、かつて民主党の副大統領候補になった経歴を持つジェラルディン・フェラーロ氏(右).jpg フロレンティナの幼少期から実際のアメリカの歴史を辿ていて、彼女が上院議員をしている時期はカーター、レーガン政権の時代になっていますが、現実には、本作刊行の2年後の'84年の大統領選挙の時に、民主党がフェラーロという女性「副」大統領候補(姓と名の違いはあるが"フロレンティナ"と語感が似ているので印象深かった)を指名したものの、大統領戦(モンデールvs.レーガン)そのもので共和党に惨敗して、女性の副大統領は誕生しませんでした(結局、副大統領になるかどうかは大統領選次第ということ)。
ヒラリー・クリントンとかつての民主党副大統領候補フェラーロ(右端) [ロイター/2008]

Sarah Palin.jpg その後、'08年の大統領選の民主党指名争いにヒラリー・クリントンが立ちましたがオバマに破れ、一方、共和党は党として初の女性副大統領候補サラ・ペイリンを立てているというのが現況('08年10月)。この間に、フェラーロ(24年前の)副大統領候補はヒラリー候補の政治資金担当顧問をしていたものの、自身の「オバマ氏が仮に白人だったら現在の地位にはいられなかった」との発言が人種差別であるとの批判を受けて辞任するという出来事もあって、いろいろあるなあ、大統領選って、という感じですが、副大統領はともかく、女性大統領はまだ先になりそうです。
共和党副大統領候補サラ・ペイリン [ロイター/2008]     

ロスノフスキ家の娘.jpg 一応、単独の読み物としても楽しめますが、前作を読んだ方が良いにこしたことはなく、親同士の確執の深さが前提にないと、ホームドラマに出てくる単に頑固な親父とあまり変わらない印象になってしまうかも。
 前半部はフロレンティナの成育史(家庭教師や学校での教育等)が詳しく描かれていて、やや冗長感もありましたが、仮に大統領になる女性がいるとしたらこんな感じで育っていくのかなと思わせる面もあり、それなりに面白かったです(前提として大富豪の娘であるというのがあるが)。

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