【1014】 ○ 大塚 勇三(再話)/赤羽 末吉(画) 『スーホの白い馬―日本傑作絵本シリーズ』 (1967/10 福音館書店) ★★★★

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ワイド・シークエンスで伝わってくるモンゴルの平原の広大な景観。

スーホの白い馬2.jpg 『スーホの白い馬―モンゴル民話 (日本傑作絵本シリーズ)

馬頭琴.jpg 1967(昭和42)年刊行で、元になっているのはモンゴル民話。
 貧しいけれどもよく働く羊飼いの少年スーホは、ある日、地面に倒れもがいていた白い子馬を拾って家に連れて帰ってくる。スーホの世話したかいがあって、やがて子馬は立派に成長し、スーホは、殿様が開く競馬大会にこの白い馬と参加して見事優勝するが―。

 モンゴルの楽器・馬頭琴の由来になっている話であるとのことですが、この絵本のお陰で、ご当地のモンゴルよりも日本での方がよく知られている物語になりました。
子供の頃に読んでやけに悲しかった思い出がありますが、国語の教科書に出ていたらしいです(もう、その辺りの記憶はないが)。

 赤羽末吉(1910-1990)の絵がいい。この人、'80年に日本人で初めて「国際アンデルセン賞」の「画家賞」('66年開設)を受賞していて、その後に日本人でこの「画家賞」を受賞したのは、今のところ安野光雅氏('84年受賞)しかいません('08年現在)。

 絵本のサイズが24cm×32cmで、絵が全部見開きなので、幅60cm以上のワイドなシークエンスになり、これがモンゴルの平原の広大な景観などをよく伝えていますが、演劇の舞台絵の画家でもあったことを考えると、確かに、奥行きや照明効果的なものもうまく採り入れているなあと改めて感心させられます。

 ストーリーはシンプルですが、名作童話というのは意外とそういうものかも。
 作家の椎名誠氏がどこかで推薦していましたが、この作品をモチーフに「白い馬-NARAN-」('95年)という映画も撮っているぐらいですから、その思い入れは相当のものなのでしょう。でも、わかる気がするなあ。椎名氏なら嬉々として現地ロケやりそう。

1 Comment

大塚勇三(おおつか・ゆうぞう=児童文学者)2018年8月18日、肺炎で死去、97歳。
 モンゴルの民話をもとに再話した「スーホの白い馬」が代表作。「長くつ下のピッピ」(アストリッド・リンドグレーン作)、「トム・ソーヤーの冒険」(マーク・トウェイン作)など海外文学の翻訳も手がけた。66年に「リンドグレーン作品集」で、68年に「スーホの白い馬」でサンケイ児童出版文化賞を受賞した。

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