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自分の無知に気づき嫌気がさす前に、読み終わってしまう気軽さ。
『ことわざの知恵 (岩波新書 新赤版 (別冊7))』 ['02年] 『四字熟語ひとくち話 (岩波新書 新赤版 別冊 10)』 ['07年]
岩波書店編集部員がことわざ研究家・時田昌端氏の『岩波ことわざ辞典』('00年/岩波書店)の刊行を手伝った際に気がついた、ことわざの色々な側面や「目から鱗が落ちる」(57p)エピソードを拾い集めた本で、1ページにことわざ1つずつ収め、説明も至極簡潔、かつ軽妙洒脱で(「赤信号皆で渡れば怖くない」(27p)なんていうのも含まれている)、楽しく一気に読めました。
『岩波ことわざ辞典』 ['00年]
「医者の不養生」と「紺屋の白袴」のニュアンスの違い(9p)など、何となくわかっていても、きちんと説明されてなるほどという感じ。医者の場合は単なる言行不一致だけれど、紺屋の方は、忙しく手が回らないということか。「紺屋の明後日」(10p)なんて言われるのも、天候次第で納品が遅れることがあるわけだ。紺屋さん、大変だなあ(自社のサイトが更新されていないホームページ制作会社っていうのはどっちに当たる?)。
「年寄りの冷水」(128p)とは、冷水を浴びているのではなく、冷たい生水をがぶ飲みしている図であり、「知らしむべからず、由らしむべし」(129p)とは、「十分な知識の無い民衆に、政策の意味や理由を理解させることはできないだろうが、政策が間違っていなければ従わせることはできる」という意味であって、民衆には何も知らせるなということではないのだ。
こうしたことわざの誤釈も多く紹介されていますが、「船頭多くして船山に登る」(120p)が「大勢が力を合わせれば何でもできる」とかいうのはまさに珍解釈、「灯台下暗し」(135p)は「トーダイ、モト、クラシ」であり、ここで言うトーダイとは、岬の灯台ではないし、「天高く馬肥える秋」(138p)の馬とは、北方の騎馬民族の馬であり、もともとは事変に備えよということらしいけれども、こうなるともう元の意味では使われていないなあ。
たまにこういうの読むと自分の無知に気づき、いやになることもありますが、ページ数も175ページしかなく、嫌気がさす前に読み終わってしまう気軽さも却っていい。
このシリーズでは、あと、『四字熟語ひとくち話』('07年)がお薦めで、こちらも1ページに1つずつ四字熟語を収めていますが、解説がエッセイ風とでも言うか、時折世相への風刺も入って、「天声人語」を読んでるみたいな感じ。