【1007】 ○ 河合 隼雄 『対話する人間 (2001/02 講談社+α文庫) 《(1992/07 潮出版社)》 ★★★★

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河合心理学のエッセンスと言える本かも。

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対話する人間 (講談社プラスアルファ文庫)』['01年]『対話する人間』['92年]

 河合隼雄(1928-2007)自らが折にふれて各所に発表した小文を集めたもので、'92年にいったん単行本として刊行された後、'01年「講談社+α文庫」に収めるにあたり再編集したもの。

 「家族と自分」の関係から始まり、「悪と個性」の関係、「病の癒し」について、更に人生における「遊び」の意味や「夢と現実」についてなど、話題は人間関係の問題、心の問題から生きがい、老いの捉え方など生き方の問題にまで広く及んでいます。

 お得意の童話や児童文学についての解題があるかと思えば、母性社会における日本人という氏独特の比較文化論的捉え方も展開されていて、臨床心理学者としての実体験や「中年の危機」「人生の正午」といったユング心理学の河合氏流の解説も随所にあり、まさに河合心理学のエッセンスと言える本かも知れません。

 いろいろな所で発表したものの寄せ集めである分、ややテーマが拡散気味のきらいもありますが、それでも読み手を引きつけたまま最後までもっていくのはさすが(最後は少し宗教的なテーマに入っていきます)。

 個人的には、ノイローゼの人が症状がとれて退院するので、家族が喜んで赤飯を炊いて待っていると、退院してきた人はいなくなり、探しに行くと裏山で縊死していたという報告が強く印象に残りましたが、他にも、考えさせられる話が多く紹介されています。

 ヒンドゥーの「学住期・家住期・林棲期・遁世期」という考え方が紹介されていますが、河合氏自身は文化庁長官となり、それは氏の本意だったのか、また、氏にとって良かったことなのか、少しばかり考えてしまいます。

 【1992年単行本〔潮出版社〕/2001年文庫化[講談社+α文庫]】

《読書MEMO》
●桃太郎→孤児の子こそが英雄的行為をやりとげる(64p)
●ロビンソン『思い出のマーニー』(心身症の子(アンナ)が治る過程を描いた児童文学、「マーニー」は実はアンナの内面で作り出されたキャラクター(175p)
●ノイローゼの人が症状がとれて退院、家族は赤飯炊いて待ってたが、裏山で首吊り自殺していた(264p)

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