【981】 ○ 加賀 乙彦 『小説家が読むドストエフスキー (2006/01 集英社新書) ★★★☆

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死の家の記録、罪と罰、白痴、悪霊、カラマーゾフの兄弟の5作品の人物造型や創作技法を"講義"。

小説家が読むドストエフスキー.jpg 『小説家が読むドストエフスキー (集英社新書)』 ['06年] 加賀乙彦(かが おとひこ).jpg 加賀乙彦 氏(略歴下記)

 カトリック作家の加賀乙彦氏が、朝日カルチャーセンターで、ドストエフスキーの諸作品について、その作品構造や伏線の張り方、人物の造型法やストーリーとプロットの関係などを、小説家の立場から、創作の技法や文体の特徴に力点を置いて講義したものを、テープ起こしして新書に纏めたもの。
 『死の家の記録』、『罪と罰』、『白痴』、『悪霊』、『カラマーゾフの兄弟』の5作品の文庫版をテキストとしていますが、内容も平易で、語り言葉のまま活字化しており、読んでいて、カルチャーセンターに通っているような気分になります。

ドストエフスキイ 加賀乙彦.jpg 『ドストエフスキイ』('73年/中公新書)では、精神科医という立場からドストエフスキーの癲癇という病に注目しながらも、実質的には、多くの特異な性格の登場人物の分類や分析、それらの創造のヒントはどこにあったのか、といったことに力点が置かれていたような気がしましたが、それは、本書についても感じられ、講義の前半分(『死の家の記録』『罪と罰』)では、特にそう感じました。

 大作『白痴』『悪霊』については、登場人物の関係の持たせ方などにも着目し、『カラマーゾフの兄弟』の講義で、やや宗教的な問題に突っ込んで話している感じ。
 但し、全般的には、一般向けの"文学講義"ということもあってか、ツルゲーネフやトルストイといった作家たちの作品との比較、日本の作家や文学作品に影響を与えている部分などにも話が及んでおり、更には、ドストエフスキーの人生そのものや、その作家としての生活ぶりも紹介していて、そうした幅広さの分、作品自体の分析はやや通り一遍になったきらいも。

 そうした意味では、いかにもカルチャーセンターでの講義という感じもしなくはないですが、作品自体を丁寧に再構築してくれていて、内容を思い出すのにちょうど良く、ドストエフスキー作品に対するバフチンの分析(「ポリフォーニー」や「カーニバル的」といったこと)やベルジャーエフの言説(「キリスト教的な愛」+「ロシア的な愛」といったこと)をわかり易く要約してくれたりしていているのも有り難い点。
 難解とされる『カラマーゾフの兄弟』の「大審問官」の部分の解説なども極めて平易で、入門書としては悪くなく、むしろお薦め、但し、原作を読まないことにはどうしょうもないけれど(受講生は、講義の前に読んで"予習"して講義に臨むということになっていたのではないかと思われるが)。
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加賀 乙彦
1929年、東京生まれ。本名・小木貞孝。東京大学医学部医学科卒業。東京拘置所医務技官を務めた後、精神医学および犯罪学研究のためフランス留学。帰国後、東京医科歯科大学助教授、上智大学教授を歴任。日本芸術院会員。『小説家が読むドストエフスキー』(集英社新書)の他、『フランドルの冬』『宣告』『湿原』『永遠の都』『雲の都(第一部 広場、第二部 時計台)』など著書多数。

  



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和田泰明

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This page contains a single entry by wada published on 2008年8月29日 23:36.

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