【966】 ○ ブラッサイ(写真)/パトリック・モディアーノ(文) 『やさしいパリ (1991/12 リブロポート) ★★★☆ (○ ブラッサイ 『ブラッサイ写真集成 (2005/08 岩波書店) ★★★★)

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1930年代の妖しげでしっとりとした夜のパリを"演出"。
やさしいパリ.jpg   ブラッサイ写真集成.jpgブラッサイ写真集成19.jpg  ブラッサイ.jpg Brassai
ブラッサイ やさしいパリ』(31.6 x 23.8 x 1.6 cm)['91年]『ブラッサイ写真集成』(32.2 x 25.6 x 4 cm)['05年]/[下]"Brassai Paris: 1899-1984 (Taschen 25th Anniversary Special Editins)" (30.9 x 24.5 x 2.1 cm)['08年]
ブラッサイ やさしいパリ.jpgブラッサイ やさしいパリ1.jpg 妖しげな夜のパリの風景を撮って魅力あるブラッサイ―"ブラッサイ"というのは、「ブッブラショブ(トランシルバニア地方の地名)から来た男」という意味で、彼はハンガリー人だったけれども、後にフランスに帰化したとのことでした(国籍上はハンガリーおよびフランスの二重国籍)。1930年頃までピカソ、ダリ、ブラックらともに 画家、彫刻家、ジャーナリストとして活躍していたのが、雑誌に書く記事の挿し絵の代わりに経費削減のため写真撮影を開始したというから面白いものです。ヘンリー・ミラー、ジャック・プレヴェールらと「夜のパリ」を歩き回り、特に娼婦や恋人たちの作品を多く残しています。

ブラッサイ写真集成2.jpg 三脚の前に立つ"自写像"からもそのことが窺えるように、構図をキッチリ決め込んで撮るタイプだったらしいですが、でも、この『やさしいパリ』にある写真はスナップっぽいものも結構あるような...。でも、何れも決して隠し撮りやドキュメントではないらしく、最初に彼の撮りたいイメージがあり、 撮影前にモデルらとの雰囲気作りを行なって多くの要素を計算した上で撮っていたとのこと。それでいて、ここまで自然な雰囲気で写真が撮れるのが不思議です(モデルと言っても普通の人なわけだし、子供などもスゴくよく撮れている)。昼間の写真もいいけれども、やはり夜の盛り場などアンダーグランドな世界を撮った写真が、しっとりした感じでいいです。なにせ、1930年代のパリですから...。

「プレ・カトラン」の仮面舞踏会 1947年.jpgBrassaï2.jpgBrassaï3.jpg ただ、夜のパリの猥雑なムードを伝える写真群としては、『ブラッサイ写真集成』('00年原著刊行、'05年/岩波書店)などの方が充実しているかもしれません。

 1930年代の夜のパリと言えば、ヘンリー・ミラーとかもいた頃ですが、前述のとおり彼はミラーとも親交があり(異邦人同士で通じ合えた?)、この写真集には、ブラッサイの撮ったミラーの写真や、ミラーがブラッサイに寄せた文章などもあります。その内容が、まさに「天才が天才に感応した」といった感じで、一流の写真(家)評になっています。 

「プレ・カトラン」の仮面舞踏会 1947年

ピカソ、グラン=ゾーギュスタン通り 1939年.jpg 『ブラッサイ写真集成』の方は、こうした貴重な文書が収められているだけでなく、ブラッサイのデッサンや造形作品も収められていて、写真自体も、ピカソの仕事場などを撮ったものから昆虫や花蕊、結晶などを取った科学写真のようなものまで幅広く、この写真家の創作領域、モチーフの領域の広さが窺えます(「集成」の趣旨に沿っていて、ブラッサイの全貌を知るにはいいが、写真集としてはやや拡散感も)。

 箱入りの立派な製本ですが、値段も高いので、資料的興味がある人は、書店より先ず図書館で探してみては。

 これと比べると、『やさしいパリ』の方は、ページ数が少ないところへパトリック・モディアーノの詩文が挿入されいたりもして、やや掲載作品数が少ないかなという感じも。彼の詩文を読まなくとも、写真を見ているだけで、充分、叙情的な気分に浸れます。

ピカソ、グラン=ゾーギュスタン通り 1939年

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