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「●講談社現代新書」の インデックッスへ
全体としては、ケータイ・リテラシーを高めることの重要性を説いているのだが...。
『ケータイ世界の子どもたち (講談社現代新書 1944) 』['08年]
今は小学生ぐらいから "ケータイ・デビュー"することがごく普通になってきていますが、親が日常で使っているのを見れば、子どもも自然とそうなるのでしょう。中学生などは、自宅からでも置き電話を使わず、メールで友だちと連絡を取り合うことが普通みたいだし...。つまり彼らは、電話としてよりも、メールやゲームでケータイを使用しているわけですが、本書を読んで、小中学生にとってケータイの世界が、かなりウェイトが大きいものになっているということがわかりました。本書で「人気ベスト3」として紹介されている、「モバゲータウン」や「プロフ」、多くの"ケータイ小説"を生んでいる「魔法のiらんど」など、それぞれに凄い数の利用者がいるわけです。
著者が本書執筆中の'08年3月に、千葉県柏市で「プロフ」の書き込みを巡って中学生同士の殺人未遂事件があり、本書刊行とほぼ同時期の'08年5月には、政府の「教育再生懇談会」が、「小中学生の携帯電話使用に関して何らかの使用制限をするべき」との提言を出していて、著者も、文科省の「ネット安全安心全国推進会議」とかいうものの委員であるらしい。
本書でも、ケータイが犯罪に使われた例をあげ、子どものコミュニケーション能力の伸長に支障をきたす原因となっているような論調が見られたので、最後に、「だから、子どもにケータイを持たせるのはやめましょう」と訴える、その系の"御用学者"かなとも思いましたが、読み終えてみると必ずしもそうでもなかったみたい。
地域で行われている子どもたちのケータイの利用を抑制する運動なども紹介していますが、どちらかと言うと著者自身は、親には、子どもにケータイを持たせる際に、危険性もあることの注意を促し、濫用させないようにする約束事を定めるのがよいとし、行政や企業にはフィルタリングの徹底を求め、全体としては、ケータイ・リテラシーを高めることの重要性を説いているといった感じでしょうか。
但し、現代の教育やしつけの問題への言及が拡がり過ぎて(著者の専門は教育学)、それら全てをケータイを起点にして論じるのはちょっと強引に感じられ、それでも言っていることはまあまあ正論なのかも知れませんが、「教育テレビ」を見ているような感じ、とでも言うか、あまりインパクトをもって伝わってこない。「モバゲー」を問題ありとする一方で、やたら「魔法のiらんど」の肩を持っているように思われる点も、少し気になりました。