【942】 ○ 金田一 春彦 『日本人の言語表現 (1975/10 講談社現代新書) ★★★☆

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日本人の言語表現を通し、その心性を浮き彫りに。一番驚いたのは、著者の博覧強記ぶり。

日本人の言語表現862.JPG日本人の言語表現.gif     日本語 金田一春彦.jpg
日本人の言語表現 (講談社現代新書 410)』['75年]  『日本語』岩波新書['57年]

 日本人の言語表現が諸外国人に比べてどのような特色を持つかを論じた本で、著者は、自著『日本語』('57年/岩波新書)が日本語の「ラング」(言語体系)の特色を論じたのに対し、前著『日本語の生理と心理』('62年/至文堂)をベースとした本書は、日本語の「パロール」の性格を考えたものだと言っています(「パロール」とは何かと言うと、言語活動には「ラング(言語)」と「パロール(発話)」があり、「ラング」を言語体系とすれば、「パロール」は個人の意思や思想を伝えるために発する「お喋り」と言ってもいいだろう。この分類をしたソシュールは、言語学は「ラング」のみを対象とすべきだとしたが、そうした意味においても、本書は、「日本語論」であると同時に「日本人論」であると言える)。

 古今の様々な使用例を引き、日本語表現の「言い過ぎず、語り過ぎず」「努めて短く済ます」、「なるべく穏やかに表し」「間接表現を喜ぶ」といった特徴と、その背後にある日本人の心性を浮き彫りにしていますが、本書の特徴は何といっても、その使用例の"引用"の多さにあるでしょう。

 『古事記』『日本書紀』『万葉集』『今昔物語』『伊勢物語』『源氏物語』『枕草子』『平家物語』『大鏡』『古今著聞集』『源平盛衰記』『義経記』『梁塵秘抄』『徒然草』といった古典から、西鶴の『武道伝来記』『諸国話』『世間胸算用』、或いは『里見八犬伝』『浮世風呂』などの江戸文学、『葉隠』や『奥の細道』から洒落本まで、更に、歌舞伎(『絵本太功記』『仮名手本忠臣蔵』『白波五人男』など)、狂言、浄瑠璃、謡曲、落語、浪曲、常磐津に至るまで、近代文学では、永井荷風(『濹東綺譚』)、芥川龍之介(『貝殻』)、尾崎紅葉(『金色夜叉』)、夏目漱石(『坊ちゃん』)、泉鏡花(『婦系図』)、志賀直哉(『城の崎にて』『暗夜行路』)、小泉八雲といった近代文学、これに山崎豊子の『華麗なる一族』など現代文学も加わり、ラジオ・テレビなどのアナウンサーやタレント(黒柳徹子や大橋巨泉も出てくる)の言葉使いなども例として引いています。

ことばと文化.jpg「甘え」の構造5.jpg日本人とユダヤ人.jpg日本人の論理構造.jpg日本人の意識構造(1970).jpg 更に、べネディクト『菊と刀』、会田雄次『日本人の意識構造』『日本人の忘れもの』、板坂元『日本人の論理構造』、ベンダサン(山本七平)『日本人とユダヤ人』、土井健郎『甘えの構造』、南博『日本人の心理』など、先行する多くの日本人論を参照し、祖父江孝男、鶴見俊輔、上甲幹一(『日本人の言語生活』)、渡辺紳一郎、清水幾太郎、ドナルド・キーン、鈴木孝夫など多くの学者・評論家の言説も引いています(これらは、ほんの一部に過ぎない)。

 あまりに引用が多すぎて、解説がコメント的になり、「論」としての印象が弱い感じもしますが、作品のエッセンスを読み物的に一気に読ませて、全体のニュアンスとして日本語の「喋り」の特質を読者に感覚的に掴ませようとする試みともとれなくもありません(ちょっと、穿った見方か?)。

 個人的には、「辞世の句」とかいうのは日本においてのみ顕著に見られるもので、新聞などに俳壇や歌壇があって一般の人が投稿するなどというのも外国人から見ると驚きであるというのが印象に残りましたが、元々、俳句・短歌というのが日本独特の短詩型だからなあ(鈴木大拙、李御寧、板坂元などの日本人論にも、俳諧論は必ず出てくる)。
むしろ、一番驚いた(圧倒された)のは、著者の博覧強記ぶりだったかも。

    



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