【898】 △ 吉野 信 『カラー版 アフリカを行く (2002/11 中公新書) ★★★

「●地誌・紀行」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【240】 清水 芳見 『イスラームを知ろう
「●中公新書」の インデックッスへ

「アフリカを行く」と言うより、アフリカに「野生動物を撮りに行く」。撮影と"狩り"は似てる。

アフリカを行く.jpgカラー版 アフリカを行く.jpg
カラー版 アフリカを行く (中公新書)』 ['02年]

 本書にはアフリカの野生動物の、まさに野生で生きるままの姿を撮った写真が満載されていますが、著者は、もともと映画や本などを通して、アフリカの自然への憧憬を抱き、動物を描くイラストレーターを目指していたとのことで、写真家になってからも30年にわたりアフリカの自然を撮り続けている人です。

 文章がしっかりしていて、アフリカで野生動物と出くわした時の緊張感や、弱肉強食の世界を目の当たりにした時の衝撃、動物写真を撮るときの苦労などがよく伝わってきます。
 根底に古典的な「サファリ(狩猟)」感覚を感じるのは、著者が「ハタリ!」('61年)などの映画に影響を受けたことを告白しているせいもあるでしょうが、撮影というものが"狩り"とプロセスにおいて殆ど変わらないものであるからではないでしょうか(少なくとも、本書を読むとそう感じられる)。

 ビクトリア瀑布などの大自然、多様な現地部族、都市部の瀟洒な生活なども紹介されていますが、やはりメインは野生動物であり、撮影もケニアやタンザニアなどの自然公園でのものが主なので、書名から、アフリカ各地の歴史・地誌・文化を巡る旅を想起した人には、肩透かしのものとなっているかも知れません(写真集としても、新書版なので、野生動物写真を収めるにはちょっと迫力不足かも)。

カバ大集合.jpg NHKの「ダーウィンが来た!」で、アフリカで川が干上がり、僅かに残った水場に多数のカバが殺到した様子を撮った「壮絶1200頭!カバ大集合」というのを見て、"集合"と言うより、水場にカバを"敷き詰めた"みたいな感じでなかなか凄かったですが、どこかで見聞きしたことがあったなあと思ったら、この本の中であったことを思い出し、久しぶりに取り出してみた次第。
 NHKの番組ホームページ(撮影の裏話が面白い)で調べたら、撮影場所はタンザニアのカタビで、本書での撮影場所は、ボツワナのオカヴァンコ・デルタ、カタビは世界最大のカバ集合地、オカヴァンコ・デルタは世界最大の内陸デルタ地帯だそうです。

NHK「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」'08年4月放送:「壮絶1200頭!カバ大集合」

 本書にもある、オカヴァンコ・デルタをモコロ(丸木舟)で行く旅は、地元の観光ツアー・コースになっていて、探検気分を味わいたい人には人気のようです(あまり、野生動物の生態に影響が出なければいいが)。

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1