【889】 ○ エドワード・レビンソン 『エドワード・レビンソン写真集 「タイムスケープス・ジャパン」―針穴で撮る日本の原風景』 (2006/06 日本カメラ社) ★★★★

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都会を背景にした"シティスケープス"に独特の味わい。

タイムスケープス・ジャパン.jpg 『エドワード・レビンソン写真集 「タイムスケープス・ジャパン」―針穴で撮る日本の原風景 (NC PHOTO BOOKS)』(25 x 24.2 x 1.8 cm)

 千葉・房総在住の米国人ピンホール写真家エドワード・レビンソンの作品集で、この人は1953年生まれで、1979年から日本に住んでいるので、キャリアの殆どを日本で活動していることになります(まあ、オーガニック・ライフを実践するエッセイスト・鶴田静さんの夫でもあるわけだが)。

SacredJapan01.jpgSacredJapan12.jpgHealing12.jpg この作品集の前半は、千葉の里山の風景など全国の自然を撮った作品や、寺社や祭りなど、日本的な聖性や神秘、習俗をモチーフに撮った作品が多く、自然と人、伝統と人との対比を表すうえで、露出の長いピンホールの特性が充分に生きていて、また、光の部分がソフトフォーカスのようになるため、見る側を包み込むような"癒し"感を醸しだしています。

JapaneseCityscapes05.jpgJapaneseCityscapes06.jpgJapaneseCityscapes04.jpg 後半は、同じくピンホールの特徴を生かして、東京などの都市の風景やそこに行きかう人々の姿をルポルタージュ風にとった"シティスケープス(Cityscapes)"というシリーズ写真が掲載されていて、背景は一転して殺風景な都会のものであるのに、スナップ風に撮られた(実際には、相当の露出時間がある)それらの写真には、前半からの流れで何となく"ホッと"させられるものもあれば、不思議な既視感や余韻を残すものあります。

JapaneseCityscapes01.jpg 前半部分は、日本人の郷愁に訴えかけるものがあり、レビンソン特有の「光と影の対話」「時間と存在」といったテーマを内在しながらも、レビンソンだけでなく多くのピンホール写真家が指向している「癒す風景」であるように思えます。
 それに対し後半部分は、都会で暮らす人の心にふっと開いて、またすぐに閉じる、小さなエアポケットのようなものを切り取った感じがあり、これも「癒し」に繋がると言えばそうなのかも知れませんが、後半の方がより味わいがあり、この写真家のキャリアが生きているのではないかという気がしました。

 写真にある"半透明"の人物の像などを見ているうちに、日本語で"影"とは、("火影"や"面影"という言葉があるように)"光"や"姿"を指す言葉であるということを、何となく思い出しました。

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