【886】 ○ 空山 基 『ガイノイド (1995/09 リブロポート) ★★★☆

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ピンナップ女性が、コスプレでメタリックな装飾をしている? そうとれば新しそうで古いとの見方も。

The Gynoids (Paperback).jpg
 ガイノイド.jpg 
ガイノイド』['95年](ペーパーバック 36.1 x 25.4 x 1.3 cm ) 『ガイノイド』 ['93年](ハードカバー)/『ガイノイド』 ['93年](ペーパーバック 37 x 26.8 x 1 cm)

aibo.gif イラストレーターで、SONYのAIBOのデザインでも知られる空山基(はじめ)の作品集ガイノイド・シリーズの一番初期のもの。ペーパーバック版('95年)の2年前にハードカバー版(トレヴィル社)が出ていています。

air.jpg 『セクシー・ロボット』('88年)という画集で国内外に知られるようになった空山基(多くの人が、彼の描くメタリックな女性ロボットの絵、またはそのマネモノを見ているはず)ですが、「ガイノイド」とは、SF的発想に基づく機械人間系ロボット、つまりサイボーグの女性版とのことです。

 この人はもともと80年代にピンナップ画からスタートした人ですが、その時すでに、ピンナップ画はノスタルジアの類になっていて、そこで、新世紀のエロティシズムを探究した結果、「ガイノイド」という発想をSFから取り込んだことのようですが、どちらかと言うと、この作品集の初期シリーズは、ピンナップ女性が、コスプレ的にメタリックな装飾をしているようにも見えます(エアーブラシの技術はピカ一。新聞広告の車の光沢なども、全てエアーブラシで仕上げをしていることを知っている人はどれぐらいいるだろうか)。

 ボンデージ・モチーフを入れているのも特徴ですが、そのスタイルがヨーロピアン・クラシカルという感じで(全然「新世紀的」ではない)、こういうの、外国人の嗜好には合うのかも知れないが、日本人向きではない。
 実際、外国人女性ばかり描いた作品集は海外で売れていて、日本では、ボンデージからも外国人からも離れて、単にメタリックなロボットか(アート誌の表紙とか)、ただ肉感的な日本人ピンナップを(二見文庫のカバー絵とか)描くような仕事ぶりが見られます。

メトロポリス.jpg ペーパーバック版の表紙にある絵をはじめ、フリッツ・ラングの「メトロポリス」('27年)をモチーフにした作品がいくつかありますが、以前この映画をドイツ文化センターに見にいったとき、手塚治虫が観客として来ていました。
 「ロボット愛」ということでは、手塚治虫の方が、より根が深いかも。手塚治虫は成熟した女性を作品の主人公にすることはなく、女に成り切っていない少女ばかりをヒロインにしましたが、「ロボット」というのは、女に成り切れないという意味では少女の表象ともとれ、手塚治虫にとっての「ロボット」は、時に少女と等価であったのではないでしょうか。
メトロポリス」(1927年) DVD

 一方、空山基の絵のベースにあるのは、やはり80年代のピンナップのような気がし、それにクラシカル・ボンデージが加味されているとすれば、新しそうで実は古いというのが、この作品集の特徴ではないかと思います。

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