【874】 ○ 流産・死産・新生児死で子をなくした親の会 『誕生死 (2002/04 三省堂) ★★★★

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"葬送のセレモニー"の意義について考えさせられた。

誕生死.jpg 『誕生死』['02年]
読売新聞 2002.8.23(朝刊)
誕生死 読売新聞2002.8.23(朝刊).jpg 赤ちゃんを流産・死産・新生児死で亡くした親たちの手記が紹介されている本で、'02年に刊行された際に反響を呼びましたが、特に同じ経験をした人から強い共感が寄せられたそうで、それだけ、同じ体験をし、独り悩んだり葛藤したりしている人が多いと言うことでしょうか。

 出産準備のための本は多くあっても、それは無事に出産することを前提に書かれているものばかりであり、それだけに、経験者のその時の哀しみの大きさは計り知れないものだと思いますが、こうして手記の形で自分の身に起きたことを対象化し、心情を吐露することは、哀しみを浄化する働きもあるのかも。

 少なくともこの本に登場する親たちは、哀しみを乗り越える糸口を見出し、強く生きているように思え、例えば、その後も子どもを産み、兄弟がいたことをわが子にオープンにしているケースが多いことを見ても、それが窺えます。

 この本が出来上がったきっかけは、こうした経験をした母親の1人がインターネットの自らのホームページにその経験を綴ったことからだそうですが、アメリカなどではこうした共通の哀しい体験をした人のサークルやコミュニティが数多くあり、日本の場合は、交通遺児の会は以前からあり、また最近では、犯罪被害者や家族が自殺した人の集まりなどもありますが、この分野はまだまだではないでしょうか。     

stillborn.jpg  死産や新生児死の場合、哀しみを受け入れ、それを乗り越える手立てとして、ささやかながらでも"葬送のセレモニー"を行うということが1つあるのではと、本書を読んで思いました。外国では、医師の側から、亡くなった子を兄弟に抱っこさせたり、家族みんなで一緒に写真を撮ったりするよう勧めてくれるそうで、別れの時間をゆっくり過ごせるような配慮がされていると、本書のあとがきにあります。

 流産・死産・新生児死を総称して"STILLBORN"(それでもなお生まれてきた)と呼ぶそうですが、この言葉で検索すると、そうした葬送のセレモニーの写真などを掲載したホームページが幾つもあることがわかります。

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