【846】 △ ニキ リンコ 『自閉っ子におけるモンダイな想像力 (2007/06 花風社) ★★★

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「画面分割できない」という"情報処理"の特質が、想像力の欠如の原因だとわかる。

自閉っ子におけるモンダイな想像力.jpg 『自閉っ子におけるモンダイな想像力』 俺ルール! 自閉は急に止まれ.jpg 『俺ルール!』 自閉っ子、こういう風にできてます!.jpg 『自閉っ子、こういう風にできてます!

 翻訳家で、幼い頃から周囲との違和感を抱きながら育ち、30代でアスペルガー症候群(知的・言語的遅れのない自閉症スペクトラム)と診断された著者は、"爆笑"エッセイや対談、講演などを通じて自閉の内面を語る活動を続けていて、対談『自閉っ子、こういう風にできてます!』('04年/花風社)では、「雨が刺すように痛いと感じる」といった自閉症独特の身体感覚などを取り上げ、エッセイ『俺ルール!-自閉は急に止まれない』('05年/花風社)では、1つの思い込みに囚われるとなかなかそこから抜け出せないという自閉症者の特質をユーモラスに解説していました。

 本書ではさらに、その「想像力の欠如」の問題をとり上げ、"自閉流の情報処理"の特質として、頭の中でものを考えるとき「画面分割できない」ということを訴えています。
 同時に複数の想像図を頭に描くことが出来ないため、時間交替して1つ1つ表示するしかない、ところが1つの想像図を描くのに時間がかかり、一旦イメージが表示されると今度は消すのが難しくて次に移れない、移れたとして、一旦消去されたイメージは今度は復活できない、従って、「AだからB、BだからC」というように単線的に思考を進めていくことが出来ても、「CだからD、DであればE、では、Cの次がDでなければどうなるか」といった遡及的な想像が苦手であるとのこと(その時点で始まりがAだったことも忘れている場合がある)。

 自閉児には、計算や漢字の読み書きは普通に出来るのに、文章題、文章読解になると滞ってしまうケースがよく見受けられますが、本書の説明がその裏付けになるのではないかと思わせます。
 また、本書にあるように、仮に、見比べやすいように複数の想像図を思い浮かべることが出来るまでに至っても、「実際の世の中ではどちらがありそうかを判断する力」や「なさそうと判断された想像図を頭からふり払う力」が弱かったりするのですね。

 専門書を敬遠しがちな読者にも入りやすいスタイルの本(それでいて奥は深い)ではありますが、自閉症者はたいへんなのだけれども他人にはわかってもらえないという被害者意識のようなものがやや先行しすぎているのと、文章が今ひとつ読みにくいような気がし(相性の問題?)、挿絵の漫画もごてごてしていて見づらく、コマ漫画は読む気がしない。
 このシリーズ、他にも何冊か刊行されていますが、体裁・挿絵は同じパターンが続いていて、個人の嗜好の問題かもしれませんが、より多くの人に読まれることを欲するならばもう少し見やすくして欲しい(文字だけは大きすぎるぐらい大きいのだが...)。

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