「●心理学」の インデックッスへ Prev| NEXT ⇒ 【203】 相場 均 『異常の心理学』
読んでいて面白いが、フロイト学派だとこうなってしまうのか、という印象も。
『夢判断―あなたの知らないあなたの欲望』〔'68年/カッパ・ブックス〕(カバー-デザイン:田中一光/カバーイラスト:辰巳四郎/推薦文:懸田克躬)
フロイト学派(新フロイト派)の外林大作氏の書いた一般向けの夢解釈の本ですが、夢の中に現れる物や人物、行動が50音順に並んでいて、自分の夢の中で印象に残った事柄をそこから手繰れば、その夢の意味が解るという親しみやすい構成のため、かなり多くの人に読まれたのではないでしょうか。
Salvador Dali
「死体」は"秘密"の象徴である(だから、夢に死体が現れる場合は、何とかしてそれを隠そうとしている場合が多い)とか、「トイレ」に行くことは"情事"を表す(どの戸を叩いても使用中だというのは、自分が知っている異性はみな結婚していたり恋人がいて、相手にしてくれないという失望感を表す)とか、結構、当時は面白いと思って読んだ部分がありました。
夢に現れるものの殆どが性的願望の象徴として解釈されていて、「靴をはく夢は、婚約者や配偶者など、社会的に承認された特定の異性に対する性的願望です。なぜなら、足が男性、靴が女性を表わすものであり、また、靴はスリッパと違って自分の足に合った特定のものでなくては、はけないものだからです」とありますが、要するに、細長いものや棒状のものは全て男性器の象徴であり、丸いものや器状のものは全て女性器の象徴ということになっているので、読んでいて、読んでいて面白いことは面白いですが、だんだん本当かなあという気になってくる―。
フロイトの考えを要約すると、夢は、昼間の生活で満たされない願望を夜になって満たすという役目を果たしているということですが、宮城音弥の『精神分析入門』('59年/岩波新書)に、フロイトとユングの神話解釈の対比があり、フロイトは過去の願望から解釈し、ユングは将来の何かを示すために〈目的的〉に解釈したとあり、夢の解釈においてもそれは当て嵌まるでしょう(宮城音弥は、フロイトの説明は"後ろ向き"、ユングのは"前向き"とも言っている)。
『精神分析入門 (1959年) (岩波新書)』
一つの解釈方法に教条的にとらわれない方が良いとは思いますが、同じタイプの夢でも「学派」によって解釈が対極的に異なったりする点が、夢解釈を心理療法などにとり入れる際の難しい点ではないでしょうか。
外林 大作氏(そとばやし・だいさく=横浜市立大名誉教授、心理学)2012年4月2日、中咽頭がんのため死去、95歳。