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「●中公新書」の インデックッスへ
この分野の一般向け「新書」としては、先駆けに位置する本。
『児童虐待―ゆがんだ親子関係 (中公新書)』〔'87年〕
本書は'87(昭和62)年刊行で、児童虐待について書かれた一般向け「新書」としては、先駆けに位置するものではないでしょうか。
児童虐待が実際にどれぐらい起きているのかは、家庭内の密室でのことであり、表に出ている数字は氷山の一角であると言われていますが、統計数字そのものは、本書の昭和48年に行われた調査の結果などを見ても、既に相当数の報告があったことがわかります(この調査はわが国初の全国調査で、コインロッカーに赤ん坊を遺棄する事件が当時頻発したために行われたものとのこと)。
本書では児童虐待の種類を、身体的虐待、性的虐待、ネグレクトに大別して、実際例を挙げて解説するとともに、虐待する親たちの事情や「継子いじめの神話」の実態を、統計数字等から慎重に分析しています(虐待した継母が被害者的立場にあったケースが多いことを示唆している)。
また、被虐待児がどのような成人になるか、そのゆくえを追うのは難しいとしながらも、近年よく聞く「虐待の連鎖」の問題を既に取り上げています(海外の報告例を見ても、児童虐待との相関が最も高いのは、経済的困窮であり、親から虐待を受けたというのはずっと下位の相関になるが、それぞれの母集団が異なるので、結局比較する意味が薄いと言える)。
本書を読むと、虐待する家族は様々な問題を含むが、まず、親自身が、"自分の病を知らない病人"であることがわかり、こうした親を救済する組織やネッヨワークの確立が、米国などに比べ日本は立ち遅れているということがわかり、この状況は今日まで続いているように思えました。
《読書MEMO》
●章立て
第1部 被虐待児症候群(児童虐待とは何か;児童虐待の歴史;児童虐待の現状)
第2部 虐げられる子どもたち(身体的虐待;性的虐待;ネグレクト--保護の怠慢・拒否;虐待は再発する)
第3部 親と子と(虐待する親たち;継子いじめの神話;虐待された子ら;被虐待児のゆくえ)
第4部 子どもたちを守るもの(治療と援助;児童虐待の法律;声なきマイノリティ・グループのために)