【800】 ○ 清水 義範 『わが子に教える作文教室 (2005/10 講談社現代新書) ★★★★

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親にもセンスが求められるかも。読んでいて楽しい本でもある。

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わが子に教える作文教室 (講談社現代新書)』〔'05年〕

 作家であり、10年以上にわたり小学生に作文指導を行っている著者による本。作文指導でまず大事なのは「褒める」ということ、褒めてやる気を出させ、そのうえで、ポイントを絞ってアドバイスするのが効果的とのことですが、どこを褒め、どこをどのように指導するか、親にもセンスが求められる(?)と思いました。

 上手な作文だけでなく、一見"下手くそ"な作文も多く紹介されていますが、著者に導かれてそれらをよく分析してみると、行間に生き生きとした感性や感情が込められていて味わいがあったりする、なのに大人はついついそうした良さを見落とし、言葉使いや句読点の正誤に目がいったり、「そのとき君はどう思ったの」と無理やり感想めいたことを書かせがちであると(確かに)。

 著者によれば、こうした"心模様"を書かせようとすることは、作文に文学性を持たせようとしていることの表れであるけれども、多くの子どもはそう指導されても戸惑うことが多く、そうした文章を書くのが得意な子もいれば、観察文的な文章において能力を発揮する子もいるわけです。
 小学校高学年になると、書いたもの立派な調査報告文になっているケースもあって、それらを、気持ちが描かれていないとして貶したり、無理やり直させるのはマズイと。

 著者が良くないとしていることのもう1つは、作文に道徳を持ち込むことで、それをやると国語教育ではなく道徳教育になってしまい、作文から生気が失われてしまうわけですが、学校教育の場においては、知らず知らずのうちにその傾向があるかもしれません。

 著者はテクニックを否定しているわけではなく、接続詞の使い方をきちんと教えること、比喩表現や擬人法などを遊び感覚で用いることを推奨していて、そうした著者の指導のもとで書かれた子どもの作文には、独特の勢いやリズムがあったり、思わず微笑んでしまうような楽しいものが多いですが、文体を強制したりユーモアを強要するのではなく、子ども自身にセンスが育つのを待つことが肝要であると。

 「週刊現代」に連載されていたものを1冊の新書にしたもので、「教える」側として父親を意識して書かれていますが、母親や教師が読んでも参考になると思われます。
 子どものセンスがストレートに発揮された場合、こんな面白い文章が出来上がるのかと感心させられる箇所が多く、読んでいて楽しい本でもありました。

《読書メモ》
●作文指導でまず大事なのは「褒める」ということ。褒めてやる気を出させる
●"心模様"を書かせること(作文に文学性を持たせること)を強要しない
●作文に道徳を持ち込むと、国語教育ではなく道徳教育になってしまう

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