【796】 △ 和久 峻三 『刑法面白事典 (1977/02 主婦と生活社・21世紀ブックス) 《 刑法おもしろ事典 (1986/06 中公文庫)》 ★★★☆

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肩の力を抜いて楽しめる法律入門または法律クイズ&エッセイ。

刑法面白事典.jpg 『刑法面白事典―ハンカチをしけば和姦になるという常識のウソ』 〔'77年〕 刑法おもしろ事典.jpg 『刑法おもしろ事典』 〔中公文庫/'96年改版版〕

 新聞記者から弁護士になり、その後推理作家となった著者の、法律入門書シリーズの1冊で、「他人のカサを間違えて持ち帰ったら、罪になる?」「バラを1本盗んでも窃盗になる?」「ケンカをして誰がケガをさせたのかわからない。こんな事件はどう処理される?」「無銭飲食・無銭宿泊も頭の使い方で罪にならない?」「雪の降る深夜に路上に寝ている男をはねたら」などの問いに対し選択肢から正解を選ぶクイズ形式をとりつつ、実際の刑事事件の例をもとに、刑法の考え方をわかりやすく解説しています。

刑法面白事典3.jpg 著者のこのシリーズには『憲法面白事典』、『民法面白事典』などもあり、それぞれ「楽しみながらわかる最高の法規の常識とウソ」、「飲み屋のツケは1年で時効という常識のウソ」というサブタイトルがついていて、本書のサブタイトルは「ハンカチをしけば和姦になるという常識のウソ」というものですが、何れも文庫化(中公文庫)される際に、サブタイトルは外したようです(『民法』、『刑法』のサブタイトルは面白いと思ったけれど)。

民法入門.jpg 本書の刊行は'77年ですが、刊行後5年間で100刷以上増刷していて、弁護士である推理作家がこうした一般向けの法律入門書を書いた例では、さらに一昔前の、元検事だった佐賀潜(1914‐1970)の法律入門書シリーズがあり、こちらは『民法入門-金と女で失敗しないために』、『刑法入門-臭い飯を食わないために』(共に光文社カッパ・ビジネス)が'68年にベストセラー2位と3位になったほか、商法・税法から労働法や道路交通法まで広くカバーしています。

 民法については国家試験受験の際に、和久版『民法面白事典』と佐賀版『民法入門』の両方を読み、文学部出の自分にとってどちらも役に立ちましたが(勉強中の適度な息抜き?)、参考書という観点で見れば、和久版の方がやや読み物(エッセイ)的な感じで、佐賀版の方がカッチリした内容だったかも。

 本書、和久版『刑法面白事典』にも、ケーススタディのQ&Aの他に、法律用語の読み方クイズとか、江戸時代の刑罰についてやロッキード疑獄の新聞記事をどう読むかといったトピック、実際にあった珍事件とその結末(いかにも元新聞記者らしい)などが挿入されていますが、刑法については全く試験を離れて読んだため、これはこれで楽しめました。

 【1986年文庫化・1996年文庫改版[中公文庫]】

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和久峻三(わく・しゅんぞう、本名・古屋峻三=ふるや・しゅんぞう)2018年10月10日心不全で死去。88歳。

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