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CGがいいか、筆画がいいか。研究成果とともに変遷する恐竜画(像)。
『寺越慶司の恐竜』 『恐竜 (小学館の図鑑NEO)』
( 25.6 x 24.8 x 2 cm)
「小学館の図鑑NEO」シリ-ズの第1期全16巻が5年がかりで出揃いましたが、その殆どを買い揃え、NEO版『恐竜』('02年)も当然購入済み。この『恐竜』に最も多く「恐竜画」を提供しているのが、市川章三、小田隆の両画家で、背景画も含めた迫力ある恐竜画などは、挿絵と言うより絵画作品に近いものがあります(時々、署名が入っているものがありますが、その気持ちワカル)。
小田 隆 氏 (古生物アーティスト)
NEO版『恐竜』の両氏の絵は、筆を用いて描かれてた油彩乃至アクリル画だと思われますが、一方、この寺越慶司氏はCGによる恐竜画の第一人者で、本書『寺越慶司の恐竜』に描かれた恐竜は、目の輝きや皮膚の質感は、CGならではのリアルさです(「図鑑」と言うより「CG画集」の趣き)。
寺越 慶司 氏 (CGアーティスト)
どちらが良いかはその人の好みの問題だと思いますが、皮膚の彩色では、市川氏や小田氏が筆で描いたものの方が凝った感じで、恐竜の大きさをイメージさせる遠近感も出ているかも(但し、皮膚の色については、皆さん想像で描いているわけですが)。
一方、皮膚の質感や光沢は、寺越氏のCGの方がより本物に近く見せていて(何となく既視感を感じるのは、これが映画「ジュラシック・パーク」などの恐竜とダブるため?)、本書前半部分では闘う・反撃する・追う・追われる・吠える・育てるといったテーマごとに恐竜たちを描いていますが、精緻さが絵をよりダイナミックなものにしています。
本書では、図鑑形式をとりながらも、その恐竜画を描いた際の経緯や工夫・研究した点が所々記されていて、著者のそれぞれの恐竜に対する思い入れが感じられます。
興味深いのは、同種の恐竜が時代とともに描き方が変遷していることを、自らの作品において示していることです。
市川、小田両氏もそうですが、寺越氏も、最新の古生物学の研究情報を基に描画していて、この世界、どんどん新たな恐竜の化石の発見や、定説を覆すような研究成果の発表があるらしく、そうした動きに対応していこうとするならば、今後は、描き直しが難しい筆画よりもCG画の方がアドバンテージは高いということになるのでしょうか。
ただし、寺越氏の描画工程が本書に紹介されていますが、これ見ると、CGも決して楽ではないことがよくわかります。