【779】 ○ ブルーノ・エルンスト(坂根厳夫:訳) 『エッシャーの宇宙 (1983/07 朝日新聞社出版局) ★★★★

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エッシャーの技法の秘密を解き明かす。技法の原理はCGと同じだった。

エッシャーの宇宙70.JPGimagesA7GUKRS4.jpg エッシャーの滝.bmp "エッシャーの"滝".
エッシャーの宇宙』 大型本(梱包サイズ(以下、同)25.8 x 21.4 x 2 cm)〔'83年〕

 物理法則に反しているように見える不思議な「だまし絵」や、同じオブジェクトが繰り返し現れながら変化していくパターン画などで知られるオランダの画家(版画家)エッシャー(M.C.Escher 1898‐1972)の「作品集」、と言うより「作品解説」本。

 「作品集」としても楽しめますが、それはそれでもっと豪華なものがあり、本書は、エッシャーの生涯についての記述のほかに(これは当然のことながら、「本格的作品集」にも書かれている)、主要作品の創作の秘密を明かしていることが最大の特徴です。
 エッシャー自身は自分の作品に芸術的寓意は無いとしていて、本書もそれに呼応するかのように、技術的解説を中心に書かれています。

エッシャー.jpg 最も単純な例で言うと、風景画の一部が突出して見える作品の場合、通常の遠近法で描いた絵に、格子状のマトリックスを被せ、さらにそのマトリックスを意図的に(非ユークリッド幾何学的に)歪めて、元の1つの格子に対応する元絵を、変形された格子に再現していることがわかり、これは、現在のCG(コンピュータ・グラフィックス)の技法と同じだなあと。

 もともと建築の勉強からスタートしてグラフィック・アート的な素養を開花させた人ですが、結晶学的、フラクタル的、リーマン幾何学的なデザインは高度の幾何学的才能を窺わせ、その作品群はまさに「宇宙」と呼ぶにふさわしい。
 ところが、本書を書いたブルーノ・エルンスト(数学・物理の先生で、エッシャーと交友があった)によると、エッシャー自身は数学的知識はなく、直感と試行錯誤の中から数学的構造を見抜いて、これをイメージの上に描き出すことが出来たのだそうです。

 エッシャーの公式サイト(http://www.mcescher.com)では、彼の作品を3DのCGムービーで見ることが出来、また、CGムービーはDVDとしても発売されています。

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