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2007年10月27日   書評:HUREC AFTERHOURS 人事コンサルタントの読書備忘録

【763】 ◎ 陸井 三郎 『ベトナム帰還兵の証言 (1973/07 岩波新書) ★★★★☆ (○ 川本 邦衛 『南ベトナム政治犯の証言 (1974/06 岩波新書) ★★★★)

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国策的に殺人マシーンに改造された米兵たち。“べトコン”と比べて野蛮なのはどちらか。

ベトナム帰還兵の証言.jpg 『ベトナム帰還兵の証言 (1973年) (岩波新書)』 タイガーフォース.jpg 『タイガーフォース』 ('07年/WAVE出版)
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 '71年に「戦争に反対するベトナム帰還兵の会」(VVAW=Vietnam Veterans Against the War, Inc.)が、インドシナでアメリカが実施した政策を暴露するための集会をデトロイト開き、それに参加した100人以上の帰還兵が、自由発砲、濃密爆撃、捕虜虐待、部落殲滅などの犯罪的戦術行為が“上官命令”により行われたことを証言したもので、本書はその1000ページ近い証言記録を、在野の現代アメリカ政治研究者・睦井三郎氏(故人)が抜粋・編訳したもの。

 最近では、当時の南ベトナム駐留米軍の空挺部隊小隊が、非武装の村を焼き払い、半年間で数百人の住民を殺戮したことが約35年ぶりに明るみにされ、『タイガーフォース』('07年/WAVE出版)という本になって話題を呼びましたが、本書『ベトナム帰還兵の証言』によれば、ソンミ村の虐殺程度のことはいくらでもあったらしいです。
 本書で語られている米兵による村落の殲滅や農地の破壊、捕虜の虐待や組織的な強姦などは凄まじいものがあり、語っている兵士たちも、自分たちがどうしてそうした残虐行為の“下手人”となり得たのか、半ば整理がつかないでいる様子が窺えます。 
 
 彼らの証言を通して、戦争犯罪そのものである“上官命令”は、アメリカの“政策”として設定されていたことが浮き彫りになり、そのために兵士たちは、戦場に赴く前から“殺人マシーン”となるよう訓練されていたことがわかります(冒頭の兵士たちが可愛がっていた兎を、戦場に行く前に上官が惨殺する話は実に怖い)。

 人種差別意識、女性差別意識も徹底的に吹き込まれ、普通の生活を送っていた若者や道徳的なキリスト教徒が、ベトナムの地では、捕虜を生きたまま嬲り殺し、女子供を強姦することに無感覚になる、こうした“人間の非人間化”を政策として行うアメリカという国は、本当に恐ろしい側面を持つと言えますが、こうした集会に参加して証言をする帰還兵たちは、自分たちがしたことに罪の意識を抱き、過去から逃避しようとしないだけ、“アメリカの良心”の存続に一縷の希望を抱かせる存在なのかも知れません。
南ベトナム政治犯の証言.jpg
 本書は'73年7月刊行ですが、岩波新書で同じくベトナム戦争について書かれたものでは、共同通信記者の亀山旭氏による『ベトナム戦争-サイゴン・ソウル・東京』('72年5月刊)川本邦衛氏編集の『南ベトナム政治犯の証言』('74年6月刊)などがあり、前者は、政治的観点からベトナム戦争の経緯を追いながらも、やはり、米兵の民間人に対する残虐行為をとりあげ、後者は、捕虜となった北ベトナム兵士(民間人を多く含む)の証言を集めていて、「虎の檻」と呼ばれたコンソン島の監獄などで捕虜たちが受けた拷問や残虐行為が生々しく証言されています。
                               『南ベトナム政治犯の証言 (1974年) (岩波新書)


the_deer_hunter(1).jpgディア・ハンター.jpg 『ベトナム帰還兵の証言』の中には、“べトコン”の捕虜となったアメリカ人の証言もありますが、彼らはアメリカ人捕虜もベトナム人(政府軍側)捕虜も丁寧に扱ったということで(マイケル・チミノ監督の「ディア・ハンター」('78年)では、極めて野蛮な人種のように描かれていたが、往々にしてハリウッド映画には政治的プロパガンダが込められる)、一方、アメリカ兵は、“べトコン”を捕らえると、ヘリコプターで搬送中にヘリから突き落としたりしていたという証言もあります(野蛮なのはどっちだ!)。
 映画「ディア・ハンター」そのものは、アカデミー賞を受賞した一方で、以上のような観点から「ベトナム戦争を不当に正当化している」との批判もありますが、解放戦線の捕虜となったことがトラウマとなり、精神を病んでいく男を演じたクリストファー・ウォーケンの演技には、鬼気迫るものがあったように思います。

「ディア・ハンター」●原題:THE DEER HUNTER●制作年:1978年●制作国:アメリカ●監督:マイケル・チミノ●製作:マイケル・チミノ/バリー・スパイキングス/マイケル・ディーリー/ジョン・リヴェラル●脚本:デリック・ウォッシュバーン●撮影:ヴィルモス・スィグモンド●音楽:スタンリー・マイヤーズ●時間:183分●出演:者 ロバート・デ・ニーロ/クリストファー・ウォーケン/ジョン・カザール/ジョン・サヴェージ/メリル・ストリープ ●日本公開:1979/03●配給:ユニバーサル映画●最初に観た場所:銀座・テアトル東京(80-02-15)(評価:★★★★)テアトル東京2.jpg

                            テアトル東京
                            1981(昭和56)年10月31日閉館








    



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投稿者 wadamy : 2007年10月27日 00:12