「●インカ・マヤ・アステカ」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1840】 高野 潤 『カラー版 マチュピチュ』
両王国滅亡に焦点を当て生き生きと描写。アマゾン、北米に及んだコンキスタドールの軌跡も追う。
『アステカとインカ黄金帝国の滅亡』['02年]
フランクリン・ピースとの共著『図説インカ帝国』('88年/定価3,400円)と同じく、小学館刊行の"やや"豪華版 (定価3,000円)の本で、こちらも図説は豊富ですが、共著でないだけ著者らしさが文章が出ていて、歴史上の人物が目の前に蘇ってくるような生き生きとした描写となっています。
内容的には、アステカ文明とインカ文明がどのようにして滅んだか、コルテス、ピサロが侵攻したそれぞれの文明の末期に重点を置いて書かれていますが、その他にも、コロンブスに始まる大航海時代の幕開けに活躍した人物たちの業績を解説し、また、メキシコ・ペルーだけでなく、南米のチリ・アルゼンチン・アマゾン、北米などに及んだコンキスタドール(征服者)たちの軌跡を追っています。
16世紀の大航海時代、黄金に魅入られたスペイン人たちがカリブ海の諸島や南米にどのように侵略し原住民社会を破壊したか、また、それに対して彼らがいかに抵抗したか(インカ最後の王トパック・アマルの堂々とした最期には感服)がよく纏められていて、1冊の本としてはすごく良い本だとは思います。
ただし、中核のテーマについては、同じく」増田義郎氏の『インカ帝国探検記-その文化と滅亡の歴史』('61年/中央公論社、'01年/中公文庫BIBLIO)、『古代アステカ王国-征服された黄金の国』('63年/中公新書)とかなり記述がダブっているので、カラー写真にこだわらなければ、主テーマについては文庫・新書などでも知識的なカバーはできると思います。
マルコ・ポーロの黄金伝説に導かれて西へ西へと行ったら本当に"黄金の国"があったというのが、偶然ながら、彼らの征服欲に拍車をかけることになったのだなあと(本書によると、コロンブスは、エスパニョラ島―今のドミニカ・ハイチをジパング、キューバを中国だと思っていたらしいが)。
それと、バハマにしてもジャマイカにしてもそうですが、カリブ海諸国に今いるのはアフリカ系住民ばかりで、原住民の子孫はどうしていないのかと思ってしまいますが、カリブ海のゴールドラッシュ時代に原住民が借り出され、そこにスペイン人が持ち込んだ天然痘が蔓延したため免疫を持たない原住民が多く死に、人手不足で周辺諸島から住民が奴隷として輸入され、また天然痘で死んでいく―というパターンで、無人化してしまった島々が多くあったことを知りました。
コルテスのアステカ帝国征服(1519‐1521)
(赤線)