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「●「うつ」病」の インデックッスへ
うつ経験がビジネス人生のステップになるという、当事者としての強いメッセージ。
『デキるヤツほどウツになる―ビジネスマンのためのメンタルケア読本』 『デキるヤツほどウツになる―ビジネスマンのためのメンタルケア読本 (小学館文庫 Y う- 8-2)』 〔'07年〕
35歳のときにうつ病を発症したという人が書いたビジネスマン(ビジネスパーソン)のためのメンタルケアについての本で、自分がうつ病になっているだけに、うつにならないようにするにはどうすれば良いか、それ以上悪化させないようにするにはそうすればよいか、治った後に再発を防ぐにはどうすれば良いかが、ビジネスマンの視点に立って具体的に書かれています。
単に個人の考えではなく、専門家の監修を交え、医学的見地からの解説もされていて、大手・先行企業のメンタルヘルスケア対応例が紹介されています。
従って、書かれていることにそれほど偏りは無く、「デキるヤツほどウツになる」というタイトルも、完璧主義や几帳面な人ほどうつ病になりやすいという点では当たっているように思われます。
著者が言うように、デキる人ほど自分は最近うつではないかと思いがちで、むしろ、デキないくせに自分はデキると思っている人ほど、「うつなんてデキないヤツがなるものだ」と思っているのかも。
うつについて書かれた他の本にもありますが、本書にも「つらくなったらまず病院へいくこと」とあります。
大体、うつの人は、自分でそのことを受け入れれば、わりとすんなり病院にいくことが多いのではないかと思われ、むしろ問題は、うつの予兆がじわじわと表れるため、本人も病気だとは思わず、周囲も気づかないことが多いということなのかもしれません。
休職中に"気晴らしの旅行"をすることが逆効果になることがあるとか、うつであることを"カミングアウト"することで得られる効用など興味深い話もあり、うつ経験(ウツ・キャリア)が次のビジネス人生の良い方向へのステップになるという考えには、当事者としての強いメッセージが込められているように感じました。
一方で、自分がうつになった経緯についてはほとんど書かれておらず、この著者の場合は、「今も治療中」であるということからも、仕事要因よりも気質的要因によるものなのではないかという疑念も少し抱きました。
著者には『僕のうつうつ生活』('05年/知恵の森文庫)という本もあり、そちらの方を読めば、著者自身のことはわかるのかも。
【2007年文庫化[小学館文庫]】