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「●日経文庫」の インデックッスへ
企業施策としてのメンタルヘルスケアを、医学・実務・法律の各観点からバランスよく解説。
『メンタルヘルス入門』 (2007/04 日経文庫) 島 悟 氏 (東京経済大学教授・精神科医) NHK教育テレビ「福祉ネットワーク」 '05.06.14 放映 「ETVワイド-"うつに負けないで"」より
'06年に安全衛生法が改正されて、過重労働者に対する面接指導が一部義務化されるなど、メンタルヘルスに関する施策が一段と強化されました。
本書はそうしたことを踏まえ、職場のマネジャーや人事労務担当者を念頭に置いて書かれたもので、まず、昨今の職場においてメンタルヘルスがいかに厳しい状況にあるかを示し、その切り口として「ストレス」について解説するとともに、それによりどのような「心の病」が見られるか、さらに改正安全衛生法の「新メンタルヘルス指針」が企業に要請していることを解説し、マネジメント上乃至人事上、具体的に何をすればよいのかを示しています。
「心の病」についてはうつ病、パニック障害(不安発作)、職場不適応の3種類が代表格で、その他の「心の病」も紹介されていますが、やはりこれらの中でもうつ病については、重点的に解説されています。
本書を読むと、改正安衛法の新指針は、旧労働省の'00年の「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」を踏まえたものであることがわかり、旧指針において"重要なケア"とされているものは、①セルフケア、②ラインによるケア、③産業保健スタッフ等によるケア、④事業場外資源(医療機関・相談期間等)によるケアの4つとなっていますが、この中でも、ラインマネジャーが部下の適切な労務管理、メンタルヘルスケアを行う「ラインによるケア」が大切であり、その具体的アクションとして「傾聴」を説いています。
著者は精神科医であり、勤労者のメンタルヘルスが専門で、本書は、精神医学・心理療法面、企業内実務面、法律・行政指針面のそれぞれについてバランスのとれた内容で、新書版の物足りなさもありますが、入門書としては偏りがなくて最適、「心の病」で休職していた人の復職の進め方などは、個人的に 大いに参考になりました。
《読書MEMO》
●「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」('00年・旧労働省)における"重要なケア"(117p)
①セルフケア
②ラインによるケア
③産業保健スタッフ等によるケア
④事業場外資源(医療機関・相談期間等)によるケア
●安全衛生法改正に伴う「労働者の心の健康の保持促進のための指針」('06年)のメンタルヘルス対策の7つのポイント(122p)
①法律に基づく指針となったこと
②1次予防から3次予防までを含む包括的指針となったこと
③衛星委員会等の調査審議事項として取り上げたこと(メンタルヘルス対策に、形式対応ではなく実効性がお求められる)
④家族との連携への言及
⑤事業場内メンタルヘルス推進担当者が新設されたこと
⑥個人情報保護法への配慮
⑦ラインによるケアの補強(管理監督者は部下である社員の状況を日常的に把握でき、部下のストレスを察知し状況改善できる立場にあるという考え)
●「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」('04年)における"職場復帰支援プログラムの5つのステップ"(139p)
第1ステップ:病気休業開始及び休業中のケア(診断書に職場復帰の準備を計画的に行えるよう、療養期間の見込について明記してもらう、等)
第2ステップ:主治医による職場復帰可能性の判断(職場復帰可能の判断が記された診断書に、就業上の配慮に関する主治医の具体的な意見を含めてもらう、等)
第3ステップ:職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成
第4ステップ:最終的な職場復帰の決定
第5ステップ:職場復帰後のフォローアップ(通院状況や治療の自己中断等のチェック、現在の病状や今後の見通しについての主治医の意見を労働者から聞き、必要に応じて労働者の同意を得たうえで主治医と情報交換する)
※復職をめぐる主治医と産業医の判断が一致しない場合もある
・産業医の方が事業所の特性・職種・職位・業務内容を熟知、就業上の配慮についてより適切な判断が可能
・ただし、産業医はメンタルヘルスの専門医ではない場合、主治医の判断を追認しがち。
●現場のマネジャーが留意すべき点(145p)
①すべての業務上の配慮の根拠は医学的判断にある
②産業医・保健婦などの看護職、または主治医とコミュニケーションを十分にとる
③労務管理をきちんとする