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会社草創期の話が面白かったが、冷めた老人の淡々とした回想録のような感じも。
『リクルートのDNA―起業家精神とは何か』('07年/角川oneテーマ21) 江副 浩正 氏
リクルートが輩出した起業家人材は数多く、それらは前書きなどでざっと紹介されていますが、第1章では、「社員皆経営者主義」などリクルートの「経営理念とモットー」が纏められていて、さらに第2章では、松下幸之助、本田宗一郎など江副氏が薫陶を受けた名経営者がズラリと並び、今も昔も、成功した起業家にはメンターのような人がいたのだなあと改めて思いました(そうした人たちから可愛がられる要素をこの人は持っていたのではないか)。
後半はほとんど、リクルートの歩んできた道について書かれていて、森ビルの物置小屋で就職情報誌(「企業への招待」、のちの「リクルートブック」)」事業を始めたという第4章の草創期の部分が、サークル的なノリが感じられて読み物としても面白く、、融資を受けるのに担保がなくて困ったという話や人材獲得においての工夫などのエピソードは、最近のITベンチャーの創業物語に通じるもありのがあります。
リクルートという会社が伸びた理由の1つとして、自社媒体に載せる広告を代理店を介さずに自分たちで集めたということがあると思いますが(これは現在の「グーグル」などにも通じる)、こうした業態が、「一人二役」という考え方や、若い社員をモチベートするための成果主義的な処遇方針にも繋がっている気がします。
ある程度の企業規模になってからの話では、発想は良かったが事業化のタイミングが早すぎたために撤退を余儀なくされた新規事業が多数あったことがわかり、ファーストリテイリングの柳井正氏の『一勝九敗』を想起させました。
ただ、手掛けたことがあまりに数多く書かれていて、一つ一つの記述が浅く、こうした冷めた記述も江副氏らしいのかも知れませんが、「起業家精神とは何か」について書かれた本というよりは、冷めた老人の淡々とした回想録みたいになってしまっている感じもします(体系的、理論的に書かれた経営書ではない、と本人も後書きで述べているが)。
ピーター・ドラッカーの書物から「企業家精神」を学んだ点で、ファーストリテイリングの柳井正氏と似ており、刑事事件での逮捕もあって柳井氏以上に毀誉褒貶のある人物ですが、大沢武志氏などの智謀を得ることで、権限委譲という点では江副氏の方がうまくいったと言えるでしょう。
江副 浩正(えぞえ ひろまさ)2013年2月8日、都内の病院で死去。76歳。