「●広告宣伝・ネーミング」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1210】 岡本 一郎 『グーグルに勝つ広告モデル』
原著出版は大正12年。アメリカにおける広告ビジネスの歴史の長さを感じた。
『広告マーケティング21の原則』 (2006/11 翔泳社)
著者のクロード・C・ホプキンス(1866‐1932)は19世紀から20世紀にかけて活躍した広告会社の経営者で、本書は広告ビジネスのエッセンスを凝縮した貴重なテキストとして、長年にわたり、広告関係者の間で読みつがれてきたものであるとのこと―、と言っても、個人的には今回初めてホプキンスの名を知ったのですが。
以前読んだものに『18人のアメリカ広告界の鬼才-時代を拓いた巨人たちに聞く』(バート・カミングス著/'87年/電通)という本があり、BBDOやオグルビーをはじめアメリカの巨大広告会社の中興の祖たちがズラリ紹介されていましたが、しかし、この中にもホプキンスの名はなく、考えてみれば、ホプキンスが本書を発表したのが1923年ということで、そうした広告界の巨人たちより更に一時代前の人ということになるわけだと。
なにしろテレビCMなどなく、紙媒体がメインの時代の話なので、やや時代ズレしている部分もありますが、「広告はセールスマンシップだ」という主張を軸に、広告は消費者の求める情報を提供し、消費者に利益をもたらすものならないとし、また広告は結果(売上への貢献度)によって評価されなければならないとして、テストマーケティングや販売店経路の確保の重要性にまで言及していて、その主張は概ね現代でも通じます。
著者自身はコピーライターの出身であり、「広告の文章は、セールスマンの話と同じように簡潔で、明瞭で、説得力のあるものでなければならない」、「イラストはそれ自体がセールスマンだ」、「人間は太陽に、美に、幸福に、健康に、成功に引きつけられる」といったクリエイティブの原則も多く盛り込まれていますが、これらもスジ論という感じ。
やや真っ当過ぎて、正直なところ個々の主張についての印象があまり強くなかったのですが、日本で言えば関東大震災のあった年(大正12年(1923年))に、アメリカでは既にこうした広告ビジネスの手法を原理的・経験的に分析・解説する本が出版され、且つ、その内容が今でも原則的に通用することにむしろ驚き、改めてアメリカにおける広告ビジネスの歴史の長さを感じました。