「●年金・社会保険」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【729】 佐藤 敦 『65歳雇用延長時代の人事担当者のための年金ガイド』
意外と"プロ向け"の入門書? 「立ち止まれ」「甘く見ないで」というスタンス。
『よくわかる離婚時年金分割』 (2006/12 光村推古書院) 柴田崇裕 『妻も夫も知っておきたい熟年離婚と年金分割』 (2006/10 総合法令出版)
社会保険労務士で金融機関等において年金相談を行っている著者が、「離婚時年金分割」についてわかりやすく書いた本で、1ページ当たりの文字数が少なくて読みやすいです。
'07(平成19)年度からスタートした当制度は、2段階施行であったり(2種類の制度があると言うべきか)、「特定被保険者」という用語の使い方をしていたりして一見ややこしいけれども、そのややこしさは本来の年金制度の複雑さからくるものであり、図などに書いて理解すれば、「年金分割」そのものの骨子は把握できるのではないでしょうか。
ただし、本書は図を一切用いておらず、言葉ですべて説明していて、それでいて様々なケースを想定し、かなり突っ込んだところまで書いてあります。
ほとんどすべて、実際の相談場面を想定して書かれていることなどからも、穿った見方をすれば、"プロ(社会保険労務士)向けの入門書"ではないかと...。
そうした意味では、相談の受け方、アドバイスの仕方などがよくわかる内容の本でもあります。
「離婚時年金分割」は、熟年離婚を考える女性にとって福音のように言われる向きもありますが、本書は、「立ち止まれ」「甘く見ないで」というスタンスで、ユーモアや現行制度に対する批判なども交えながら、「夫婦揃って年金をしっかり受けとり、最後まで仲良く添い遂げ、夫の寿命を全うさせてあげる」ことを推奨(?)しています。
ただ、やはりもう離婚しか考えられないというケースもあるでしょう。
離婚相談を専門に手掛ける行政書士の方が書いた『妻も夫も知っておきたい熟年離婚と年金分割』(柴田崇裕 著/'06年/総合法令出版)などは、同じ入門書でもそうした人向きで、離婚手続きそのものや離婚にまつわる金銭のこと全般(財産分与、慰謝料、養育費...etc.)に多くページを割いていて、タイトルにある年金分割自体の説明は僅かしかなく、似たようなタイトルでも著者のスタンスや専門性によって内容がかなり異なったものとなるのが、熟年離婚がテーマの本の特徴かも知れません。