【717】 △ 天外 伺朗 『マネジメント革命― 「燃える集団」を実現する「長老型」のススメ』 (2006/10 講談社) ★★☆

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「長老型」リーダーという概念は参考になるが、著者のスピリチュアリズムについていけず。

マネジメント革命 「.jpgマネジメント革命.jpg   天外伺朗 (てんげしろう)氏.bmp天外伺朗(土井忠利) 氏
マネジメント革命 「燃える集団」を実現する「長老型」のススメ

人材は「不良(ハミダシ)社員」からさがせ.jpg ソニーの常務だった土井忠利氏は、CDの研究開発やAIBOの開発責任者として知られる一方で、天外伺朗の筆名で『人材は「不良(ハミダシ)社員」からさがせ―画期的プロジェクト成功の奥義』('88年/講談社ブルーバックス)など組織・人材マネジメントに関する著書を早くから手掛けており、本書は"「燃える集団」を実現する「長老型」のススメ"というサブタイトルに惹かれて手にしました。
人材は「不良(ハミダシ)社員」からさがせ―画期的プロジェクト成功の奥義』 講談社ブルーバックス['88年]

 ソニー時代、社長の井深氏のもとでチーム一丸になって新製品の開発にあたった(こうした話を読むのは基本的に好き)当時の「「燃える集団」を突き動かしていたものを、高橋伸夫氏が『虚妄の成果主義』の中で説いた「内発的動機付け理論」やチセントミハイ教授の「フロー理論」で説明し、一方、そうした集団を率いた井深氏を「長老型」のリーダーシップの持ち主だったと称えています。

 本書によれば、「長老型」リーダーとは、部下を信頼し、受けとめ、サポートすることで、チームの勢いを大切にして、部下が全力を発揮できるようにしてくれるリーダーで、ファシリテーターに近いかなという感じですが、著者は、アメリカ原住民(インディアン)の長老が一族の精神的支柱となっているスタイルがこれにあたるとして、こうした命名に及んだようです。

 本書において、この「長老型」リーダーというイメージが著者なりに肉付けされている部分が面白く、また何となくですが参考になり、そのほかにも話として面白い部分は多々ありましたが、「長老型」リーダーの素養としてのカウンセリング心理学の話から、いかにして「長老型」リーダーたりうるべきかというところで、ケン・ウィルバーのトランスパーソナル心理学の話が入ってきて、どんどんスピリチュアリズムっぽい話になっていくので、ちょっとついていけませんでした(理論展開にも牽強付会のきらいがある)。

 以前にこの人の『宇宙の根っこにつながる生き方』('97年/サンマーク出版)という本を読んで、ああ、完全にスピリチュアリズムの世界へ行っちゃってるなあと思っていたのですが、マネジメント(リーダーシップ)論にもその敷衍が見られ、あまりリアリティが感じられなかったのは、自分が俗人だからでしょうか。
 皮肉な見方をすれば、井深氏のような「長老型」リーダーがいた昔のソニーは良かったという懐古主義ともとられかねないのでは。

《読書MEMO》
●「長老型」指導者とは
1. 指導者はロバートの秩序に従うが、長老は霊(スピリット)に従う。(ロバートの秩序=まず動議を出して、動議に賛成する人あるいは動議の反対意見があり、公平にその意見を聞きながら、最終的には多数決をとる方法)
2.指導者は多数派を好むが、長老はみんなの味方をする。
3.指導者はトラブルを見ると、それを止めようとするが、長老はトラベルメーカが何かを教えてくれようとしているとらえる。
4.指導者は正しくあろうと骨を折るが、長老はすべての中に真実があることを示そうとする。
5.民主的な指導者は民主主義を支持する。長老はそれも行うが、また独裁者やゴーストにも耳を傾ける。(ゴースト=無意識レベルに抑圧された文化的亡霊)
6.指導者は自分の仕事をうまくこなそうとするが、長老は他の人たちも長老になるようにうながす。
7.指導者は賢くあろうとするが、長老は自分自身の考えを持たず、自然の出来事に従う。
8.指導者は考える時間を必要とするが、長老は何が起こっているかを自覚するためにほんの一瞬を要するだけである。
9.指導者は知っているが、長老は学ぶ。
10.指導者は行動しようと試みるが、長老はなるがままに任せる。
11.指導者は戦力を必要とするが、長老はその瞬間から学ぶ。
12.指導者は計画に従うが、長老は神秘的な未知なるものを尊重する。


【2011年文庫化[講談社+α文庫(『マネジメント革命―「燃える集団」をつくる日本式「徳」の経営』)]】

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This page contains a single entry by wada published on 2007年7月21日 14:36.

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【718】 ○ 藤田 晋 『渋谷ではたらく社長の告白』 (2005/06 アメーバブックス) ★★★☆ is the next entry in this blog.

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