【715】 ○ 藤田 東久夫 『たった三行で会社は変わる―変化と行動の経営』 (2007/01 ダイヤモンド社) ★★★★

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変化への主導こそ経営者の役割。現場への気づきと直感的なひらめきが大切。

たった三行で会社は変わる.jpg  『たった三行で会社は変わる』 (' 07年/ダイヤモンド社) 藤田 東久夫.jpg 藤田東久夫 氏 (略歴下記)

 タイトルはノウハウ本の惹句みたいですが、内容の半分は経営学的な話で、それもそのはず、著者は本書執筆の直前に早稲田大学大学院で博士号を取得したばかりで、その余韻が残っているような感じ。
 本書のタイトルも、最初は「ミクロ・マクロ・ループの経営」というものにするつもりだったとか(それにしても随分くだけた感じのタイトルになったものです)。

 I℃タグやバーコードなどを利用した自動認識システム・関連製品の開発・製造・販売を主業務とする「株式会社サトー」において、創業者の娘婿として創業社長から経営を引き継ぎ、本書執筆時点で12期連続増配中ということで、こういう人をまさに専門経営者と呼ぶのでしょうが、経営論を語るにしても、常に自らに経験に即して述べているのがいいです。

 興味深かったのは、マネジメントとリーダーシップの関係を論じている点で、両者のバランスの重要性を説いていて、リーダーシップ機能が充実していればマネジメント機能はついてくるという考えです(ただし、中小・ベンチャーなどでは、マネジメント機能の充実が焦眉の急であるケースもあると指摘している)。

 経営トップ自らが現場のミクロな情報に気づき、マクロな視座からすぐに対応することを重視し、変化への主導こそ経営者の役割であって、そこでは直感的な思いつきやひらめきは大きな役割を果たすという―、その実践例が、タイトルにある「三行提案制度」で、1600人の社員が毎日3行、127文字で提案や報告を上げてくる、その情報により現場の実態を把握しスピーディーな経営を実現するとのこと。

 「なあ〜んだ、所謂従前の提案制度じゃないか」とも思われるが、そうした泥臭いことでも、一度決めたら徹底的にやるのが結構、経営の要諦なのかも。
 全部に目を通すわけにはいかない提案のフィルタリングを、管理職にではなく若手社員にやらせているのもミソ。

 最終章で日本の企業の取締役会のあり方を非難していて、これも理屈が通っていて、著者の肩書きは「代表取締役執行役員会長・CEO」というものだそうですが、どうしてそういう肩書きなのか、内容との絡みで理解しやすかったです。
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藤田東久夫(ふじた・とくお)
1951年東京都生まれ。75年慶応義塾大学経済学部卒業。
同年、日本航空入社。85年サトー入社。社長室長などを経て、90年に代表取締役社長に就任。
現在は代表取締役執行役員会長兼最高経営責任者(CEO)。
社団法人日本自動認識システム協会会長。
2006年度日本経営品質賞(JQA)判定委員。
シルバーオックス株式会社社外監査役。
2006年に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科にて博士後期課程修了。博士(学術:Ph. D.)
剣道三段(慶応義塾大学体育会剣道部)、日本ソムリエ協会ワインエキスパート資格。

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藤田東久夫(ふじた・とくお=サトーホールディングス取締役経営顧問、旧サトー元社長)2011年12月27日、食道がんで死去。60歳。

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