【714】 ◎ ピーター・F・ドラッカー (上田惇生:訳) 『現代の経営 (上・下)―ドラッカー名著集2・3』 (2006/11 ダイヤモンド社) 《 現代の経営 (正・続)』 (1956/05 自由国民社)》 ★★★★★

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CSR、バランスト・スコアカード、職務主義と役割主義の差異などの考え方もすでに。

現代の経営〈〔正篇〕〉.jpg 現代の経営〈続篇〉.jpg  ドラッカー名著集2.jpg ドラッカー名著集3.jpg  『ドラッカー名著集2 現代の経営[上]名著集3 現代の経営[下]
現代の経営〈〔正篇〕〉事業と経営者 (1956年)』『現代の経営〈続篇〉組織と人間 (1956年)

ドラッカー 現代の経営  上.jpg 1954年に発表されたP・F・ドラッカー44歳のときの著作で、"三大古典"と呼ばれるものの中でも最も有名な本。ただし、ドラッカーは存命中、何度も自著を改稿していて、今回「名著集」として出された本書も、その前の'96年版からさらに改訳されているとのこと。

 ドラッカーの著書は、アメリカ国内でも海外でも名言集のようなものが一番売れているそうですが、「成長可能な資源は人的資源だけである」(第2章)、「企業の目的は顧客の創造である」「企業には2つの基本的機能が存在する。すなわち、マーケティングとイノベーションである」(第5章)、「事業は何かを決めるのは、生産者ではなく顧客である」(第6章)、などとあるように、彼の著名な言葉の多くは本書に含まれていて、そうした言葉がどういった章で、どういった流れで使われているのか当たってみるのもいいかも。

『現代の経営』(1956/05 自由国民社)

 また、会社は誰のものかということが昨今問われていますが、この問いに対するドラッカーの答えは社会のものであるということであり、社会のための機関として富の増殖機能を伸ばしていくことがマネジメントの責任であるという前提に立っています。
 従って、「事業の目標」(第7章)には、マーケティング、イノベーション、生産性、資金と資源、利益、マネジメント能力、人的資源、社会的責任(今でいうCSR)の8つがあり(最後3つが含まれている点がポイント)、これらについてそれぞれに目標設定をすることの必要を説き、バランスト・スコアカードに相当するものの出現をすでに予言しています(第7章)。

 話を核心部分に持っていくプロセスが巧みで、ポイントとなるフェーズでは、最初に企業事例を持ってきたり、歴史的事実や故事を紹介したりし、例えば、「自己管理による目標管理」(第11章)では、マネジメントのセミナーでよく取り上げられる次のような話が紹介されています。
 それは、何をしているのかを聞かれた3人の石工のうち、1人は「これで食べている」と答え、1人は「国で一番の仕事をしている」と答え、1人は「教会を建てている」と答えたというもの。
 ドラッカーは、第3の男をあるべき姿、第1の男を報酬に見合った仕事をする者としつつ、第2の男、つまり職人気質の男をどう扱うかを問題視し、そこから経営管理者の役割や陥りやすい誤りを指摘し、さらに何を目標とすべきか、マネジメントと目標管理のあるべき関係、自己管理によるマネジメントの変革を説いています。

現代の経営 続編.jpg 本書では後半かなりの紙数を「人と組織のマネジメント」に割いていて、ここでは旧来の人事管理論を批判し、人間関係論(マグレガー)や科学的管理法(テーラー)の限界を指摘していて、具体的に人事部の在り方も批判していますが、こうした批判は皮肉にも今読んでも古さを感じさせん。
 彼はここで先行理論や手法を全否定しているのではなく、それ以前において、人の仕事を組織化すること(仕事を要素動作に分解するのではなく1つの全体に統合すること)が重要であるのだと説き、さらに、仕事にある程度の挑戦の要素を入れるようにすべきだと唱えていますが、このことは、人事マネジメントにおける職務主義と役割主義の考え方の差異にも当て嵌まる気がします。

 組織論に入る前に、1個人の仕事の組織化を説いているのは興味深いですが、さらに、人を組織するとはどういうことか、人員配置の重要性や動機付けの必要性を説き、仕事で責任を持たせるには、正しい配置を行うことのほかに、適正な目標水準設定、仕事情報の供与、マネジメント的視点を持たせることなどをポイントとして挙げています。

 書き出すとキリがありませんが、原題は"The Practice of Management"、実践しないと意味がないということでしょう。

 【1956年単行本[自由国民社(正篇『現代の経営-事業と経営者』、続篇『現代の経営-組織と人間』)]/1965年単行本[ダイヤモンド社・Executive books(上・下)]/1987年単行本[ダイヤモンド社(上・下)]/1996年単行本[ダイヤモンド社(『新訳 現代の経営(上・下)』-ドラッカー選書3・4)]/2005年単行本[ダイヤモンド社・ドラッカー名著集2・3]】

【2201】 ○ グローバルタスクフォース 『あらすじで読む 世界のビジネス名著』 (2004/07 総合法令)
【2202】 ○ ダイヤモンド社 『世界で最も重要なビジネス書 (世界標準の知識 ザ・ビジネス)』 (2005/03 ダイヤモンド社)
【2790】○ グローバルタスクフォース 『トップMBAの必読文献―ビジネススクールの使用テキスト500冊』 (2009/11 東洋経済新報社)

《読書MEMO》
●章立て
序論 マネジメントの本質
第1章・マネジメントの役割、第2章・マネジメントの仕事、第3章・マネジメントの挑戦
第1部 事業のマネジメント
第4章・シアーズ物語、第5章・事業とは何か、第6章・われわれの事業は何か、第7章・事業の目標、第8章・明日を予期するための手法、第9章・生産の原理
第2部 経営管理者のマネジメント
第10章・フォード物語、第11章・自己管理による目標管理、第12章・経営管理者は何をなすべきか、第13章・組織の文化、第14 章・CEOと取締役会、第15章・経営管理者の育成
第3部 マネジメントの組織構造
第16章・組織の構造を選ぶ、第17章・組織の構造をつくる、第18章・小企業、大企業、成長企業、
第4部 人と仕事のマネジメント
第19章・IBM物語、第20章・人を雇うということ、第21章・人事管理は破綻したか、第22章・最高の仕事のための人間組織、第23章・最高の仕事への動機づけ、第24章・経済的次元の問題、第25章・現場管理者、第26章・専門職
第5部 経営管理者であることの意味
27章・優れた経営管理者の要件、28章・意思決定を行うこと、29章・明日の経営管理者
結論 マネジメントの責任

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