【713】 ○ ジャック・ウェルチ/スージー・ウェルチ (斎藤聖美:訳) 『ウィニング 勝利の経営 (2005/09 日本経済新聞社) ★★★★

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○経営思想家トップ50 ランクイン(ジャック・ウェルチ)

人事マネジメントを重視。「人事」の仕事に携わる人にお薦め。

ウィニング勝利の経営.jpg 『ウィニング 勝利の経営』 日本経済新聞社 Winning.jpg "Winning: The Answers: Confronting 74 of the Toughest Questions in Business Today"
 『ジャック・ウェルチ わが経営』('01年/日本経済新聞社)を書いた後、もう本は書かないと言っていたウェルチですが、再婚した奥さんがハーバード・ビジネス・レヴュー誌の編集長だったせいか、奥さんのアシストでその後も本を出していて、自著の刊行は彼にとって「ナンバー1、ナンバー2」戦略に適ったものだったのかなあ、などと思ったりもして(本書刊行後も、世界中からいろいろな質問を受け、それらに答えるというQ&A方式の内容の本"Winning: The Answers"を出している)。

 企業経営においては「勝つことは最高」と言い切っていますが、勝たなければ社会貢献も何もないという考え方の根底にあるのはドラッカーでしょう。
 本書は、「勝つためには何をすればよいのか」ということについて経営全般にわたって述べていて、『わが経営』が後半、M&Aと社長レースの話に終始していたのに比べると、経営書としては纏まっている感じで、ボストンレッドソックスがワールドシリーズを制した話や、MRIの開発でGEが日立に遅れをとった理由など、比較的新しい話題や体験談もあり、また、キャリアをどう考えるべきかということについて述べていることもあって、身近な感覚で読めました。

 ビジョンとバリューの話が冒頭にあり、バリューを"行動規範"に近いものとして捉えていて、これらが経営戦略の話より前にきているのが印象的(「勝ちたいと思うのなら、戦略についてじっくり考えるより、その分、体を動かせ」とも)。
 以降、前半部分のほとんどは人事マネジメントの話で占められていて、「選別」することの重要性や人材採用、人事管理におけるポイント、人を辞めさせる際の留意点等について触れられています。

 多くの企業で「人事責任者」がCEOやCFOより格下の扱いを受けていることを憤っていて、後半の社内ベンチャーやM&Aといったテーマについても、常に人材マネジメントの観点から言及することを忘れておらず、「人事」の仕事に携わる人が最初に読む"ウェルチ本"としてはお薦めです(そうした前提で評価するならば星半分プラスして★★★★☆にしてもよいか)。

 リーダーに求められる4条件(Energy(エネルギーまたは情熱)、Energize(元気づける)、Edge(決断力)、Execute(実行力))についても再度触れられていますが、採用時においては最初の2つが必須条件であるとし(訓練で身につくものではないから)、それ以前に「率直に物を言うこと」の大切さを説いています。
 「和を以って尊しと為す」という日本的気質とは正反対で、初めてウェルチの本に触れる人にはなかなか刺激的かも。

【2701】 ○ 日本経済新聞社 (編) 『マネジメントの名著を読む』 (2015/01 日経文庫)

《読書MEMO》
●推薦の言葉
「新人からベテランまで、あらゆる人が使える、わかりやすくて網羅的なビジネス成功指南本だ」――ビル・ゲイツ(マイクロソフト会長)

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ジャック・ウェルチ
2020年3月1日、腎不全のため死去。84歳。米ゼネラル・エレクトリック(GE)の会長兼最高経営責任者(CEO)を長年務め、「伝説の経営者」とも評された。成長が期待できる事業に力を入れる「選択と集中」を掲げてGEを改革し、世界有数の優良企業に育てた。

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