【712】 ◎ ピーター・F・ドラッカー (上田惇生:訳) 『実践する経営者―成果をあげる知恵と行動』 (2004/04 ダイヤモンド社) ★★★★☆

「●マネジメント」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【116】 大沢 武志 『経営者の条件
「●ピーター・ドラッカー」の インデックッスへ

中小企業向けの助言が多い。同族経営やM&Aを成功させる秘訣に共鳴。

実践する経営者.jpg 『実践する経営者―成果をあげる知恵と行動』 (2004/04 ダイヤモンド社)

ピーター・F・ドラッカー.jpg '03年刊行の上田惇生氏編訳による「ドラッカー名言集」4部作に続く同氏の編訳によるもので(原題:Advice for Entrepreneurs)、30年にわたりウォールストリート・ジャーナルに寄稿した論文から、直接経営にかかわる助言のみを厳選したとのこと。
 経営戦略や経営者の在り方などについての自らの考えがテーマごとにまとめられていて、必要に応じて実際に社会・経済現象として起きていることを検証材料とし、具体的に解説されています。

 '80年代に書かれた論文が多く、的確に将来を見据えつつ書かれてはいますが、事例の中には時間的隔たりを感じるものもあり、しかし、それでもなお、人間の心理や行動の普遍性を見抜いたうえでの原理原則の提示には、いちいち頷かされます。
 個人的には、「同族会社が繁栄を続ける秘訣」とか「企業買収を成功させる5つの原則」などが、かなりリアリティを感じつつ読めましたが、その他にも参考となる箇所は多かったです(中小企業向けの助言がかなり含まれている)。

 本文で、すべての経営者は起業家たれ、と言いつつ、冒頭のインタビュー('85年)で、アップルの創業者たちが生き残れないという彼の予言が当たったのは、彼らに経営知識がなかったためとして、あまりに早く成功することは不幸だとしており、また、今日の経済学者は神学者と同じだと皮肉っています。
 また、未来に対しては楽観的であるという話の後に、自らが育ったオーストリアでの第一次世界大戦時代がいかに暗いものであったかを示唆していて、こうした発言に自らの個人史が反映されているのが窺えて興味深かったです。

《読書MEMO》
●中小企業が成長し続けるためのポイント (30p〜)
 1. 利益よりキャッシュフローを重視する
 2. 成長は資金需要と財務構造を変える
 3. 将来必要となる情報は何か予期しておく
 4. 技術、製品、市場を集中させる
 5. チームとしての経営陣を構築する
●ゼロ成長企業における経営の心得 (36p〜)
 1. 昇進以外の方法による動機づけを図る
 2. 昇進の見込みのない者の転職に手を貸す
 3. 成長できないのであるならば、事業の内容をよくする
 4. 安易な多角化は失敗する
 5. 大きな成長の機会は必ずある
●同族会社が繁栄を続ける秘訣 (47p〜)
 1. できの悪いものを働かせてはならない
 2. 経営に一族でない者を一人は起用せよ
 3. 専門的な地位には一族でない者の起用が必要
 4. 後継問題に関わる意思決定は、(利害関係のない)一族以外の者に委ねる
●パートナーシップに成功するには (66p〜)
 1. パートナーシップの目的を徹底的に検討する
 2. いかにマネジメントするかを決めておく
 3. 誰がマネジメントするかを決めておく
 4. 親会社における責任者を決めておく
 5. 最終決定を行う調停者を決めておく
●企業買収を成功させる5つの原則 (72p〜)
 1. 買収する側が買収される側に何を貢献できるか考える
 2. 市場、技術、経験・専門能力などの何れかの点での共通の核を持つ
 3. 買収する側の人間が買収される側の製品、市場、顧客に敬意を持つ
 4. 買収した側は買収された側に対して1年以内に経営陣を送り込む
 5. 最初の1年間は、双方の人間を(境界線を越えて)移動させ、昇進させる
●知識労働の生産性をあげる4つの方法 (117p〜)
 1. 知識労働者自身に責任を持たせる
 2. 知識労働者が自らの貢献を評価できるようにする
 3. (誰も注意を払っていないことだが)本来の仕事をさせる
 4. 配置に力を入れる(成果を生み出す人間がどこにいるかを知る)
●行動様式を変えるための4つの方法
 (191p〜)
 ※ 文化を変えてはならない。文化を変えずに行動様式の方を変える。
 1. いかなる成果が必要かを明確にする
 2. すでにそれを行っているところはどこかを問う
 3. 組織の文化に根ざし、かつ成果をあげる行動を奨励する
 4. 評価と報償を変える(ある行動が報償されれば、そのまま受け入れられる)
●リーダーシップとは何か (198p〜)
 1. リーダーシップとは仕事である(組織使命を考え、明確化し、目標を定める)
 2. リーダーシップとは責任である(真のリーダーは自らが責任を負うことを知る)
 3. リーダーシップとは信頼である(賢さでなく、真摯さに支えられるもの)

About this Entry

This page contains a single entry by wada published on 2007年7月20日 06:43.

【711】 ◎ 柳井 正 『一勝九敗』 (2003/11 新潮社) ★★★★☆ was the previous entry in this blog.

【713】 ○ ジャック・ウェルチ/スージー・ウェルチ (斎藤聖美:訳) 『ウィニング 勝利の経営』 (2005/09 日本経済新聞社) ★★★★ is the next entry in this blog.

Find recent content on the main index or look in the archives to find all content.

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1