【711】 ◎ 柳井 正 『一勝九敗 (2003/11 新潮社) ★★★★☆

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ユニクロ創業者の「わが経営」。根っからのドラッカリアン。経営者の役割を知るうえで読む価値あり。

一勝九敗tan.jpg一勝九敗』〔'03年〕  一勝九敗.jpg 『一勝九敗』新潮文庫〔'06年〕

photolib_frsymbol2.gifphotolib_uqlogo2.gif ファーストリテイリングCEOの柳井正氏の半生記であり、ユニクロの歴史を綴ったものでもあり、「わが経営」といった感じの本でもあります。

 タイトル通り多くの失敗を重ね、それらを糧として次に生かして事業を育て、現状に甘んじることなく常に起業家精神を持って挑戦を続ける姿に、親近感よりむしろ「凄い人だなあ、この人」と思わされる部分が大きかったです。

 経営戦略、事業戦略がしっかりしていて、巻末に経営理念が23条収録されていますが、コンサルタント(公認会計士)から「5つくらいにまとめたら」と言われて、すべて絶対に必要な理念なので、と拒否したというのがこの人らしく、その冒頭にくる2つが「顧客創造」と「社会貢献」を謳ったもので、本書にその名は出てきませんが、これらはまさにピーター・ドラッカーの言っていることであり、「実践しながら考える」ということ然りで、根っからのドラッカー信奉者であることが窺えます。

 成功物語としても面白く、大阪進出、関東進出の際の試行錯誤や、商品開発の苦労、ファミクロ・スポクロの失敗、最初の海外進出の際の躓きと、失敗の方が多かったのが、「フリース」で大ブレークしたわけです(個人的には、山崎まさよしのCFよりも、ロフトの回転機で「ユニクロのフリース51色」を見せたものの方が新鮮だった)。

 「ユニクロ」は「ユニーク・クロージング」の略ですが、香港の子会社登記の際に"UNICLO"の"C"を間違って"Q"としたために、そちらを採用して"UNI Q LO"になったなどの秘話も。

 人材戦略や人事考課についても多く触れられていて、「人材は経営者の手足ではない」として"自活する"社員像を理想とし、信賞必罰を説いています。

 「店長」を会社の主役だとする一方で、本部でのプロ経営者育成を課題としていますが、この人の課題はやはり後継者問題でしょう。

 本書刊行時に正・副の社長で、その後に辞めて自ら事業再生会社「リヴァンプ」を起こした玉塚元一、澤田貴司両氏は、ユニクロでは"サラリーマン社長"、"雇われ経営者"だったことを明言して憚りません。

 落ち込んだ業績は回復基調にありますが、Ⅴ字回復というところまでいかず、「フリース」の後続ヒット商品が見えないこともあり、柳井氏に対する毀誉褒貶は激しいものがありますが、この本自体は、そうしたことを割り引いても、経営者の役割とは何かを知るうえにおいて読む価値ありの内容のものです。

 【2006年文庫化[新潮文庫]】

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