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初版来の充実した内容で、移行手続き、経過措置などを解説。価格をやや上げ過ぎ?
『総解説 新企業年金―制度選択と移行の実際』 (2005/04 日本経済新聞社)
'02年刊行の『総解説・新企業年金-制度選択と移行の実際』の第2版。編者は旧厚生省の年金数理局長で、新企業年金の法制定に携わった現役官僚や信託銀行の年金数理部出身者らとの共同執筆になっていて(皆さん、数学系出身なのですね)、内容はハイレベルですが、"学者本"ではなく"実務書"です。
給付建て企業年金を中心に、各企業年金制度の内容とメリット・デメリットの比較、年金制度の移行に際してはどのような手続きが必要かを、経過措置も含めて詳しく解説して、且つわかりやすく、良書だと思います。
初版刊行時は、上場企業などが新会計基準移行を直前に控えた頃で、基金の代行返上が相次ぎましたが、「退職給付に関する新会計基準」の章では、退職給付会計の考え方だけなく、代行部分の取扱いに関する問題点まで踏み込んで書いてあったりし、また、政令や通達についても網羅されていて、企業内の実務担当者には好評を博したようです。
今回はそれを受けての改訂ともとれますが、代行返上に必要な手続、退職給付会計の改正内容や、確定給付企業年金法における金融機関の受託者責任などの法改正部分がしっかり織り込まれて解説されています。
全8章から2章増えて10章になりましたが、これは初版第2章の「各給付建て企業年金制度の変更点」を、「厚生年金基金」「キャッシュバランス型年金」「確定拠出年金制度・中小企業退職金共済制度・適格退職年金制度・退職一時金制度」の3つに割ったためで、確かにこの方がわかりやすい。
初版来「公的年金制度」と「世界の年金制度」に各1章を割いていて、網羅的といえば網羅的ですが、それ以外の部分がそのことで内容が薄まることはなく、肝心な点は詳説されていて、価格も手頃であったため気になりませんでした。
第2版は、ページ数が1割増えただけの割には(404p→440p)価格が上がり過ぎ(2,400円→3,360円)のような気が...(初版の価格設定が安すぎた?)。
《読書MEMO》
●章立て
序章 企業年金改革の背景と課題
第1章 確定給付企業年金法の概要
1 制度の枠組み
2 受給権保護
3 税制措置
4 資産運用
第2章 厚生年金基金制度
1 制度創設の経緯
2 新しい代行制度
3 適用範囲と加入員資格
4 給付の内容と支給要件
5 財政運営 他
第3章 新しいタイプの給付建て年金
1 キャッシュバランス型年金(CB型年金)
2 キャッシュバランス類似制度
第4章 確定拠出年金制度等
1 確定拠出年金制度
2 中小企業退職金共済制度
3 適格退職年金制度
4 退職一時金制度
第5章 各企業年金制度の比較と制度間移行
1 各年金制度の比較
2 移行等の全体像
3 制度の切り替え――その1:給付建て制度間の移行等
4 制度の切り替え――その2:給付建て制度から確定拠出年金への移行
5 離転職への対応――ポータビリティ 他
第6章 企業年金制度の選択
1 企業からみた選択
2 従業員にとっての選択
第7章 公的年金制度の状況
1 公的年金制度の構造
2 国民年金(基礎年金)
3 厚生年金
4 公的年金の財政と保険料負担の見通し
5 公的年金積立金の運用
第8章 退職給付に関する会計基準
1 退職給付会計導入の背景
2 退職給付会計の考え方
3 情報開示(注記)
4 諸外国の会計基準との比較
5 新企業年金制度導入に伴う退職給付会計基準の改定 他
第9章 世界の年金制度の動向
1 英国 2 米国 3 ドイツ 4 スウェーデン
第10章 年金制度の将来
1 公的年金制度の将来 2 企業年金の将来
最後に 近年の年金改革論議について
年金関連年表